新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「5類」になってから今月8日で2年が経った。
その感染症分類がまだ2類とされていた当時、緊急事態宣言が発令されたのをはじめとして、感染予防のための様々な措置がとられた。
そこでは医療機関や介護施設等で外出・面会制限が行われるのが当然とされていた。
しかもそうした制限が約3年にもわたって続いていたのだ・・・それは新型コロナ感染症のパンデミックという異常事態が引き起こした状況であり、やむを得ない措置であったと思われているが、その措置や評価が本当に正しかったのかということは、今後数年あるいは数十年後に歴史が判断を下すことになるだろう。
その際には、『当時の人類は新型コロナウイルスに対して、あまりにも無知であったのと同時に、対応も大げさ過ぎて、至る所で人権侵害が行われた。』という評価を受けるかもしれない。
今を生きる私たちは、甘んじてその評価を受けなければならない。その覚悟だけはしておこう。

ところで未だに数多くの医療機関や介護施設では面会制限が続けられている。
その状況に対して、「本当にまだ必要なのか」と疑問の声が上がっている。
先日も医師や福祉職らでつくる団体が「家族の最期のときに会えないのは人権侵害。デメリットの方が大きい」として、面会制限の緩和や廃止を求めている。
感染症に詳しい医師の一人は、必ずしも面会制限がクラスター感染防止につながらないと述べている。
厚生労働省はこのことに関連して、「面会の重要性と感染対策の両方に留意し、面会の機会を可能な範囲で確保するよう検討をお願いしたい」との見解を示している・・・責任を負うことが嫌いなお役所的言い回しで、制限が必要なのか必要でないのかよくわからないどっちとも取れる内容だ。つまり具体的な対応は各医療機関や施設に丸投げしているという意味でしかない。
だから私たちは制限すべきか否かという判断と、その判断基づいた結果責任もすべて負わなければならない。そうであるからこそ、クラスターの発生や重症者や死亡者が出ることを異常に恐れ、制限ありきの対応に走る関係者が多いことも完全に否定はできない・・・。
だが人として何ができるのか、人として何をしなければならないのかと考えることを止めてはならない。
面会制限による感染予防効果など考えられている以上に少ないのだ。
従業員が外から職場に出入りしている以上、ウイルスの侵入を面会制限で完全に防ぐことはできない・・・面会制限に制限がどれほど効果があると思っているのだろうか。それは単なる気休め効果しかない。
思えば新型コロナ感染症は、医療や介護関連関係者の制限のハードルを著しく下げたように思えてならない。コロナ禍以後に介護業界に職を求めた人の中には、介護事業は自らの都合で他者の権利をなんでも制限できると勘違いしている人も存在する。
その考え方は人の尊厳をないがしろする考え方につながりかねない。非常に危険な考え方である。
自分以外の他者の暮らしに介入し、その人の尊厳を護り豊かな暮らしを実現するために、私たちは何を行い、何を行ってはならないのかが問い直されている。
そろそろその答えを示さねばならないのではないだろうか。
※メディカルサポネットの連載・菊地雅洋の一心精進・激動時代の介護経営〜Vol.5の最新記事が5/14にアップされました。


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