アンガーマネジメントが求められる理由より続く

怒りやすいと云われる人が、怒りの感情がなるべく湧き上がらないようにするためには、自分の考え方を変える必要がある。

介護支援の場で利用者と相対した際に、相手の言動が間違っていると思った時に怒りの感情が湧き上がる。その際に、自分が正しいという判断をし続けると、自分の価値観に沿ったものしか受け入れられなくなり了見が狭くなる。

了見が狭まると周りの状況に気づけず、自分の意見に固執した結果、人の気持ちを無視してしまい、自らの信頼を失う結果にもつながる。

そうならないように他者の行動や考えを一旦受け入れることが必要とされる。

このように「自分が正しい」というこだわりを捨て、他者の考え方にも一理あると考えることによって了見が広がりを持つ。そして自分の思うようにならないことに対しても怒りの感情を持たずに済むようになる。

それは即ち、他者の考え方を共感的に理解することであり、共感的理解の姿勢がアンガーマネジメントを容易にするのである。

そうであれば、そこで必要とされる態度とは、バイスティックの7原則の一つである「受容の原則」を貫くことであると気づくであろう。

そこでは、どのような観点からでも利用者を裁いてはならないという、「非審判的態度」も求められることにも気づかされる。

さらに支援者は自分の感情を自覚し、自分の感情をコントロールして援助することによって、利用者の感情に引きずられて冷静な判断力を失わないことにもつながる。それは、「統制された情緒関与の原則」そのものである。

このようにケースワークの基本原則として1957年にバイスティックがその著書の中で述べた7つの原則のうち、受容の原則非審判的態度の原則共感的理解につながり、統制された情緒関与の原則自分の感情をコントロールすることにつながるのである。

これらの原則を貫く態度がアンガーマネジメントの基盤となるといってよいだろう。
視野を広く持つ
そして他人の感情に巻き込まれやすい対人援助の場では、自分がどのような感情や意見を持ちやすいか自覚することが必要不可欠となる。それは自己覚知と呼ばれるものであるが、それは専門職としての立場に個人的価値観が影響しないようにするために求められるものだ。

例えば、「自分は忙しいときにものを頼まれるとイライラしやすい傾向になるので気をつけよう」などと自分を戒める考え方を持つことである。

対人援助の専門家とは、このように自分の感情を否定するのではなく、素直に正確に認識することが常に求められているのだ。つまり自己覚知とは自分をあるがままに受け入れることであり、その感情をコントロールすることなのである。

場合によっては、対人援助の専門家と言えども対応する相手に対し否定的な感情を抱くこと自体はあり得ることだ。それを悪い感情だと否定するのではなく、受け入れて、だからこそ悪感情を表に出さないように気をつけようと自らを律することができれば良いだけの話だ。

対人援助の専門家は、ソーシャルワークの原則や自己覚知という基盤を揺るがさずに、自己感情をコントロールできる己を築き上げてほしと思う。

それが人の暮らしに寄り添うプロの使命感と誇りに繋がっていくであろう。

どちらにしても利用者の感情に向き合う対人援助という職業は、常日頃からの精神作業が求められる仕事であり、アンガーマネジメントの知識と共に、自分の心を護るためのストレスコーピングの知識も持ってほしい。

先日顧問先の職員研修としてアンガーマネジメント講演を行ったばかりであるが、来月3日はテーマを券たるヘルス不調を防ぐストレスコーピングとしてしているのは、アンガーマネジメントとストレスコーピングはセットで学んだ方が効果が出るという意味でもある。(参照:masaの講演予定・履歴

読者の皆様におかれましても、是非こうしたテーマの研修を実施して、従業員が怒りのはけ口として不適切な利用者対応に繋がらないようにするとともに、そうした心がけに注意するあまり、メンタルが低下しないような予防策を講じてほしい。

講師のご用命がある方は、いつでもお気軽に連絡していただきたい。
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