介護の職業は、感情労働であるとも言われる。

感情労働とは、自分の感情や気持ちをコントロールして、状況や相手にあわせた言動が必要となる仕事のことである。

介護の仕事は利用者に直接相対する仕事であり、そこで利用者とサービス提供者双方の感情のやり取りが行われる職業であるのだから、介護従事者は対人援助のプロとして自分の感情をコントロールして利用者対応する必要がある。

当然のことながら怒りの感情もコントロールしなければならない。

だがここで勘違いしてはならないことは、怒りではないということだ。人は喜怒哀楽の感情を持つ存在であり、怒りを覚えることも人として当然の感情である。

だが「怒り」は報われることの少ない感情である。仕事中に怒りを覚えて、その感情を抱えたまま業務をこなそうとしても、怒りによってエネルギーが奪われることになりかねない。その為生産性は低下することはあっても向上しないのである。
心が鎮まる風景
その他にも怒りの感情は次のようなデメリットを引き起こす。
「怒り」にとらわれてほかのことができなくなり、時間を無駄にする
「怒り」によって理解者が減り、職場での居心地が悪くなる
「怒り」で自分の顔が険しくなり、周囲から敬遠される
「怒り」で、今まで愉しめたことが愉しめなくなる
「怒り」は自分の視野を狭める

だからこそ怒りの感情が湧き上がっても、それをぐっとこらえて怒りを鎮めて業務対応する姿勢が求められるわけである。

だが果たして怒りの感情は、コントロール可能なものなのであろうか・・・それは可能である。

そもそも怒りとは何にって引き起こされるのだろうか。よくある間違いは、怒りとは、その時の出来事が原因となるという考え方である。

そうではなく、出来事を起こったときに、それを自分がどう考えるかによって、怒ったり何も感じなかったりするのだ。つまり自分の考えが怒りを生み出すのである。だからこそ考え方次第で怒りに繋がらなく出来るわけである。

「自分が正しい」というこだわりが強まると、怒りを感じさせる考えを裏付けることばかりに目が向く・・・怒りを強める考え方の癖として、「すべき思考」がある。「○○すべき」と思い過ぎると、その通りにならないこと全てに怒りを持つことになる。

このように怒りは自分で創り出しているのだ。だから考え方を変えるだけで、ある程度その感情はコントロールできる。自分の価値観だけが正しいと思いこまず、他者の考え方を受け入れようとすれば、怒る度合いも少なくなるだろう。

それでも湧き上がる怒りをなくすることはできない。どうしても湧き上がってくる怒りの感情をコントロールするテクニックがアンガーマネジメントである。

それは次のような方法を知っておき、怒りを感じたときに実践することである。
怒りのピークは初めの6秒間・その間ゆっくりと数を数える
その場から離れる〜トイレに行く、缶コーヒーを買いに行くなど
今後自分の評価がどうなるか考える〜冷静に叱ることができるのならば評価が上がる〜自分の評価向上の場面に転換しようとすることで、怒りを鎮めることができる
過去の成功体験やうれしかった経験を思い出すことで、感情をリセットする
怒りがわいたときに言うセリフを決めておく〜「大丈夫」「わかってたこと」など
怒りを点数化する〜「今回の怒りは3点」「この前は5点」「これは思ったよりも高く8点」など
深呼吸をする〜何度か繰り返すことで、副交感神経の働きが高まり、リラックスすることができる
こうした対応によって怒りを抑えて冷静な対応に結びつくと云われる。昨日アップした記事で論評した有料老人ホームでの暴行致死事件の容疑者も、こうしたテクニックを知っておれば、違った結果となったのではないかと思えてならない。

だがこうした方法論を覚えても、自分の怒りの感情がどのような理由で、どのような方向に向かう傾向があるのかを理解しないと、その場しのぎの継続性がないものに終わってしまう。

ということで、明日はこの記事の続きとして「アンガーマネジメントの基盤はソーシャルワークの原則」を書く予定だ。
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