先週金曜日に福岡県朝倉市で行われた朝倉介護保険事業者協議会研修講師として、「2040年問題の課題とこれからの対策〜介護人材が減少する時代の介護事業の在り方」というテーマで講演を行った。
団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となる2025年以降の我が国では、75歳以上の人口増は落ち着くが85歳以上の人口が伸びていくことになる。当然要介護状態となる人の数も増えるわけである。しかし少子化が止まる見込みはまったくなく、新成人数は毎年過去最少を更新している。生産年齢人口は縮小の一途をたどってるわけだ。
このように要介護者の「支え手」が財政・サービス両面で急速に縮小していき、要介護者数がピークに達する2040年頃にはその不足具合もピークに達する。つまり我が国の介護業界は、今後人材確保が益々困難となるのである。
その為、生産性向上の取り組みは待ったなしであり、見守りセンサー・自動体位交換機・高性能紙おむつなどを導入、ICTツールの活用などに積極的に取り組む必要がある。
朝倉介護保険事業者協議会研修では、そのような話もしてきた。だがそうした最先端機器を導入する取り組み以前に、従前機器を見直して、ごく普通に使っている機器に切り替えることも必要ではないかと思える出来事があった。
同講演を受講していた方から、自分が勤める施設にはまだ手ギャッジベッドが残っており、電動ベッドの導入がされていないという話を聴いたからである。
確かに昭和50年代多くの特養は手動式ギャッジベッドしか導入できていなかったと思う。電動ギャッジベッドが必要ないとは思わなかったとしても、価格がまだ高額で使うメリットも理解できていなかった。ハンドルを手動で回してギャジアップすることが当たり前と考える時代であった。
しかし今はそういう時代ではないし、一度電動ベッドを使ってしまえば、そのような手間はかけられなくなる。
特養も昭和60年代に入ったあたりから、電動ベッドの導入を進める施設が増えていったという歴史があるはずだ。
事実として僕が総合施設長をしていた社福の特養では、介護保険制度が始まる以前に全ベッドを電動化していた。その為未だに手動ギャッジベッドを使っている施設がまだ存在するとは思っていなかった。

だが手動ギャッジベッドのハンドルを介護職員が回してギャッジアップする施設に、若手介護職員は就職したいと思わないのではないか・・・ギャジアップが必要のない利用者に対して、そうしたベッドを寝るためだけに使っているならともかく、ギャッジアップが必要な利用者に対しても手動式ベッドを使っているとしたら生産性は向上しない。
しかも介護職員がギャッジアップの度に腰痛になりかねない姿勢で、腱鞘炎になるのではないかと思えるほどの勢いでハンドルを回してギャッジアップしなければならない状況は、介護職員の心身を消耗させバーンアウトさせかねない問題を引き起こしかねない。
介護福祉士養成校の進路指導教員は、卒業生の進路として推薦する際は、全室に見守りセンサーを設置していない介護施設は除外するとしている今日、手動ギャッジベッドを使用している施設とわかったら、進路指導教員は学生をそこに送り込まないように全力を尽くすだろう。
だからそのような施設には人材は集まらないと考えるべきである。
それと同じように、インカムや見守りセンサーのない施設は、求職者からも見放されることになるだろう。

さて、福岡県朝倉介護保険事業者協議会研修講師終了後は、アーチを創っていただき退場した。
少し照れ臭かったが、画像を見ると我ながら嬉しそうでもある。朝倉介護保険事業者協議会の皆様、ありがとうございました。
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