昨日(3/24)の社保審・介護給付費分科会で厚労省が提示した「賃金構造基本統計調査」によると、昨年の全産業平均と介護職員の給与の格差は8.3万円とされ、他産業で賃上げが進展したことにより、前年の6.9万円から大幅に拡大していたことが報告された。

この格差拡大によって、益々介護業界に人材が集まらなくなることを懸念する声が高まっている。だが給与格差は一事業者の企業努力で解決する問題ではない。昇給原資である介護給付費の引き上げが必要不可欠であり、それができないと介護崩壊につながりかねない。

現に全国どの地域においても、介護人材が充足している地域はない。そのため従業員募集に全く応募がないと嘆きの声が聴こえてくる。

だからこそ介護業界団体は、こぞって臨時の介護給付費引き上げを求めていかねばならないと思う。給与格差の縮小につながる、介護職員の更なる処遇改善=給与引き上げは急務の課題である。

同時に他の事業者とは差別化できる職員確保のど工夫も取らねばならない。

たとえば介護人材が不足する地域においても、いつも人材が充足しており、時折り職員募集を行う際にも、すぐに応募があって人材が張り付いている事業者もある。それは何故かということを考えねばならない。

そうした介護事業者は押しなべて職場環境が充実している。有能な指導者がいることを含めて、新人が安心して基礎教育からOJTを受けることができ、十分な知識と介護技術を得たうえで介護実務の場で独り立ちさせるような育成システムが回っているのだ。そのために職員の定着率も高い。

このように良好な人間関係をはじめとした職場環境が整えられ、さらに給与のみならず、福利厚生面で充実しているなどの評判が高いところには従業員募集への応募が速やかに行われる傾向がある・・・なぜなら介護福祉士養成校の卒業生間では、介護事業者の待遇や職場環境についての情報交換が、SNSなどを通じて頻繁に行われているからである。

そうした情報を基に、就職先・転職先が選ばれているという事実を、すべての介護関係者は意識しなければならない。

介護事業者に就職を希望する若い介護福祉士は、自らの人的ネットワーク情報やネット口コミ情報を最大の情報源として就職先を探しているため、介護事業者の公式サイトの募集広告に釣られるようなことはない。

そうした若者は、最終的に募集に応募するかどうかという判断のために公式サイトを確認する人が多いが、そこに掲載されている情報が偽物臭かったり、前時代的なセンスしか感じられなかったときに、応募しないという決断をすることが多い・・・つまりネット広告に慣れ親しんだ若者たちにとって、介護事業者の職員募集広告はマイナスアナウンスを見つけ出すツールでもあるのだ。

そういう意味では、募集広告のセンスも重要である。
センスの欠片もない募集広告
今どき従業員募集のキャッチコピーに、「大募集」といった昭和センスの言葉を使っている募集に応募する若者はいないと考えてほしい。

現に僕自身が学生に、「募集に大の文字をつけて広告を出している介護事業者には就職するな」と言っている。大募集という言葉が人集めに有効と考えるようなセンスの介護事業者に、厳しい時代の経営戦略など立てられるわけはないからだ。時代錯誤も甚だしい・・・。

自社ビルに、「介護職員大募集」という横断幕を掲げている介護事業者の、その横断幕は外されたことがあるのかと云いたい。何年も掲げ続けられている従業員募集の大弾幕は、人手が足りずに業務が回らない介護事業者だと大宣伝している姿でしかない。

そんなところに有能な人材は紹介できない。回らない業務につぶされるのが落ちであろうと思うからである。

同じく公用車に、「介護職員募集」という広告を掲げて街を走っている状態は、街中に人が足りない働きづらい介護事業者であると宣伝して走らせているようなものだ。若者はそのような介護事業者に就職しようとは思わないだろう。

時代にマッチした広告の工夫ができない介護事業者に、時代に対応した経営戦略を立てることもできないと考えなければならない。何しろ過去にないスピードで時代は変化しているのだから・・・。
メディカルサポネットの連載、菊地雅洋の一心精進・激動時代の介護経営の第4回連載、若い芽を摘まない職場環境づくりが急務が本日(3/25)アップされました。
菊地雅洋の一心精進・激動時代の介護経営
菊地雅洋の一心精進・激動時代の介護経営〜Vol.4目次
4月に入職する新人が定着するために何が求められているのかを解説しています。文字リンクをクリックして参照ください。


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