介護生産性向上は待ったなしの課題であるが、そのためには介護実務全体を見渡して、無駄な業務・しなくてよい業務をピックアップして切り捨てるという考え方も必要だ。
だが果たして日常的に行っている業務の中で、切り捨てることが可能な業務があるのだろうか。
ある!!法令解釈をきちんとすれば行わずに良い業務なのに、行わなくてよいことを知らずに必ず行ってしまっている業務があるのだ。
そのよい例が居宅サービス事業所の計画作成のアセスメントだ。どういうことか説明したい。
訪問介護や通所介護といった居宅サービスは、それぞれ訪問介護計画や通所介護計画といったサービスごとのケアプランを立案しなければならない。
しかしその作成ルールは、居宅介護支援事業所の介護支援専門員(※以下、居宅ケアマネと略)が作成する居宅サービス計画書とは異なっている。
居宅ケアマネが作成する居宅サービス計画書は、それぞれ国が定めた標準様式があり、それを用いて立案せねばならないが、訪問介護等の各々のサービス計画書はそのような様式がないため、独自の様式で作成してかまわないことになっている。
その他、居宅サービス計画書と施設サービス計画書、そして訪問介護等の計画書の法的位置づけの違いを現した表を以下に掲示するので参照願いたい。

これらの計画書を作成するに際しては、アセスメント(課題分析)を行わなければならないと規定されている。
居宅ケアマネが作成する居宅サービス計画書については、「介護支援専門員は、前号に規定する解決すべき課題の把握(以下「アセスメント」という。)に当たっては、利用者の居宅を訪問し、利用者及びその家族に面接して行わなければならない。」(基準省令13条9項)とされており、居宅訪問と面接が必須要件とされている。
(※施設サービス計画書も入所者及びその家族に面接して行わなければならないとされている。)
ところが訪問介護や通所介護といった居宅サービス事業所の計画については、居宅訪問・面接によるアセスメントの要件がない。
例を挙げると訪問介護計画書は、「訪問介護計画の作成に当たっては、利用者の状況を把握・分析し、訪問介護の提供によって解決すべき問題状況を明らかにし(アセスメント)、これに基づき、援助の方向性や目標を明確にし〜(以下略)」(基準省令第24条1項)とされており、訪問介護サービスそのものをアセスメントとしてよいとし、改めて居宅訪問・面接を行う必要はないことを示している。
通所介護計画書の場合は、「指定通所介護事業所の管理者は、利用者の心身の状況、希望及びその置かれている環境を踏まえて、機能訓練等の目標、当該目標を達成するための具体的なサービスの内容等を記載した通所介護計画を作成しなければならない。」(基準省令99条1項)とされているだけである。ここでも居宅訪問・面接の規定はない。
よって何らかの情報によって(※例えば、居宅ケアマネからの情報提供でも可)、利用者の心身の状況、希望及びその置かれている環境が把握できればそれに基づく計画作成が可能なのである。
それにもかかわらず忙しい業務の合間を縫って、アセスメントと言いながら、わざわざしなくてよい訪問面接をしている方が少なからず居られる。
どうか法令を読み直して、事業所内で出来ることはそこで完結させてほしい。そうした業務の整理こそ生産性の向上につながるのだということを理解してほしい。
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