先週土曜日に室蘭市にある介護福祉士養成校で卒業式が行われた。

しかし卒業生の数はわずか7人でしかなかった。胆振振興局管内唯一の介護福祉士養成校の卒業生が一桁の数でしかないこの現状が、介護人材不足の深刻さを現していると云える。

この広い北海道に介護福祉士養成校は11校しか存在していないが、そのすべてで募集定員が埋まっていない。このことは今後の介護事業経営にも暗い影を落とすだろう。

だからこそ今よりさらに外国人材の方々の手助けも必要になるし、生産性向上の取り組みも待ったなしと云える。

しかし介護事業で生産性向上を図るためには、介護という行為をできるだけ作業化すると勘違いしている人が多い。しかし介護を作業化して失敗した先例があることを忘れてはならない。

介護業界から退場せざるを得なかったメッセージという大手介護事業者が推奨していたシステム・・・介護業務を分単位のライン表で区切って機械的作業に終始させたアクシストシステムの弊害は何度もこのブログで指摘してきたところである。(※関連記事

その失敗の歴史を繰り返してはならないのである。

たとえば介護という行為の無駄を省いて、より効率的対応を図ろうとしたとき、認知症の方々の意味不明と感じられる訴えを無視して必要な業務を行おうと考える人がいたとする。

そこで認知症の人の訴えに耳を傾ける人がいなくなった時に、介護業務は省力化されるだろうか・・・そのようなことにはならない。我々が意味が分からないと思う認知症の方の訴えも、認知症の方にとっては意味のある切実な心の声なのである。その訴えに耳を傾けて、理解的態度に徹することで落ち着いてくれる方も多い。

だが訴えは何度も繰り返させる。そして同じことを何度も訴えるのに耳を傾けることは根気が必要であるし、時間も掛かる。

しかし根気よく時間をかけて傾聴に努めたとしても、それで目に見えて何かが変わるということは少ない。成果が見て取れなくて、無駄な時間を過ごしているのだと思うことも少なくない。
記憶の種類と回路の違い
だがそこでは認知症の方の訴えに耳を傾けてくれる人は、自分にとって良い人だと認知症の人は思っているのだ・・・それが感情の記憶である。

上の画像のように、感情の記憶はエピソード記憶意味記憶とは回路が異なるのだ。

何度も同じ訴えに耳を傾けて、共感的態度をとろうとする介護職員を、認知症の人は人として好きになってくれる。その記憶は残るのだ。

勿論、エピソード記憶や意味記憶は失われる・・・というか記憶できないから、昨日時間をかけて対応した介護職員と、今日出会った瞬間に認知症の人が、「その人は自分の好きな介護職員だ」とわかることはない。しかしその職員が話しかけて対応するうちに、「この人は私の好きな人だ」という感情がよみがえり、昨日より時間をかけずに落ち着いてくれることが多い。

これが時間を貯金するということである。それは時間をかけない不十分な対応で、認知症の人の行動・心理症状が改善しないで、後々までずっと対応を強いられるという無駄を省くという意味でもある。

このように時間を貯金できるということは、近い将来の介護生産性向上に直結することであると云える。

介護を作業化せず、人の心に働きかける行為を続けることが大事だ。心が通ずるケアに専心したとき変わるものがあるのだ。そして高品質ケアと生産性向上も対角線上にあるわけではなく、同じ軸に存在することを忘れてはならない。

それと共に、介護生産性向上につながる重要な考え方があるが、そのことについては明日論ずることとしよう。
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