僕が大学卒業後に初めて特養に勤めた当時、介護福祉士という資格は存在していなかった。

その為、僕が就職した新設社会福祉法人の特養の介護職員(当時の職名は寮母)のほとんどは、医療機関で「付添婦」をしていた人であった。それに加えて保育専門学校の新卒者が唯一の有資格者として寮母の発令を受けていた。

つまり高齢者介護について、まともな教育を受けてこなかった人々が、たまたま新設の特養の職員募集に応募して採用・勤務している状態であった。よって高齢者介護のプロを名乗るほどのスキルもなく、志も強く持たない人たちの集団が、高齢者介護にあたっていたと云われても仕方のない状態だった。

そこでは利用者対応の方法も、個人の価値観やスキルに任せて、個人に丸投げした形で行われていたた。そのため接客意識は皆無だったし、子供を扱うように高齢者対応する職員の姿も見られた。

人生の先輩である年長者に対し平気でタメ口対応が横行し、中には気分によって利用者対応が横柄になったり、乱暴な言葉を浴びせる職員も居た。それに対して誰からも指導や注意を受けることがない環境の中で、「ケアの品質」などという視点は存在せず、介護という名の作業が坦々と行われている場所に過ぎなかった。

僕はそのことがとても嫌だっだし、介護職員の利用者に対するタメ口対応が何よりもストレスであった。

その為にそれを改善しようと、「介護サービスの割れ窓理論」(文字リンクをクリックした際に送信しようとしている情報はセキュリティで保護されていませんという警告文が出たとしても、リンク先は僕の割れ窓理論記事の一覧で安全です。)を提唱し、利用者に対して丁寧語で接することを基本とするように提言し続けたが、若い生活指導員当時の職名)の言葉に耳を傾ける介護職員はひとりもいなかった。
介護事業におけるサービスマナー
しかし時を重ねながら、特養でただ一人のソーシャルワーカーとして、施設の頭脳役を担う役割を与えられるようになって、徐々に僕の考え方に共感・理解する職員が増えていった。

さらに地位が上がって、介護職に対する指揮・命令権を持つようになるなど、職場内の権力構造の変化の中で、僕の考える方向へと職員を導くことができるようにもなっていった。

それでもタメ口対応をやめられない職員は複数存在したが、僕が特養の施設長になった段階で、それらの職員は、どんなに経験を積んだとしてもリーダー職からは外し、口頭で再三注意を繰り返すようにした。結果的にタメ口対応をやめられない職員は、その職場からは去らざるを得なくなった・・・そのようにして利用者に対する従業員のタメ口対応のない、丁寧語で接することが当たり前の特養となっていったわけである。

それにともなってサービスマナー意識も向上していったように思える。

そうなるとしめたもので、そういう職場では、特段新人に対してサービスマナー教育を行わなくとも、OJTの中で丁寧な言葉遣いの指導がされて、接客から接遇への昇華が自然と行われていくことになる。そういう事業者に就職した新人職員は、丁寧語で顧客である利用者に接することが、ごく当たり前の態度に思えるようになっていくのである。

逆に言えば、今いる職員が利用者に対してタメ口で接しているとすれば、新規で採用した職員が当初は丁寧語を使っていたのが、慣れてきて数カ月後には入居者の皆様に対してタメ口になっているのも当然ということになる。

このブログ読者の中には、介護事業者における管理職やリーダー職の方も多いと思う。そして自分が所属する職場従業員の利用者対応を向上させようと考えている人も多いのではないだろうか。もしかすると僕の若い頃のように、先輩や同僚や部下の利用者に対するタメ口対応にストレスを感じて、それを改善したいと思っている人も居るのかもしれない。

本当にそう思っているなら今はその改革の正念場の時期でもある・・・4月になれば多くの職場に新卒者をはじめとした新人が多数入職してくる。その時、新人職員が先輩を見習って、利用者に丁寧な対応を行えるように成長していくことができるのか、はたまたタメ口対応をなんとも思わず、利用者の心を殺しても何の罪悪感も持たない鈍感な職員として居続けるようになってしまうのか、その分かれ道である。

タメ口対応を直せない従業員の心にも響く「介護サービスの割れ窓理論」を聴いてみたい方、介護実務に即生かすことができる「サービスマナー講演」を受講する場を創りたい方は、是非お手伝いさせていただくので、メールで連絡していただきたい。

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第2回は、「介護事業者のカスタマーハラスメント対策を考える」です。カスタマーハラスメントへの毅然とした対応は介護業界でも重要な課題です。ハラスメントにより心身が傷ついてしまった職員が休職や退職に追い込まれてしまうことは避けなければなりません。しかしそれと同時に、利用者の正当なクレームを見逃すことなく、丁寧に対応することも重要です。そのような職場を作るためにはどのような考えや行動が大切か解説します。文字リンクをクリックして参照ください。

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