僕たちは介護事業者に所属するなどして、介護サービスの利用者の方々に様々な形で対応することで金銭対価を得ている。
それは即ち僕たちが介護のプロ、対人援助のプロフェッショナルとして存在しているという意味である。
そうであればプロとしての使命感や矜持を持って、利用者に相対する責任を帯びるのだと思う。しかも介護保険事業を行う事業者の主たる収入は、公費と保険料を財源とする介護給付費であるのだから、仕事を通じて社会的責任を果たし、社会正義に貢献するという必要もあると考える。
ところがそのような使命や矜持の欠片も感じられない姿勢で、ただ単に介護事業者に所属し、お客様に対して上から目線で、「施し」でもしているかのように、品性も知性もない対応に終始している人間が存在している・・・恥ずべきことである。
僕が管理する表の掲示板に先日、祖母を介護中という方が相談スレッドを建てられた。
相談者の祖母がショートステイ(※おそらく短期入所生活介護)を利用しようとしたところ、短期入所事業所の担当者から、「利用者には帰宅願望があり、帰るという欲求が強いので、家族の方からショートステイを利用することをきちんと説明して、納得をさせないとサービス提供できない」と言われたというのである。
まったく馬鹿げた考え方だ。
ショートステイは、自ら望んで利用するケースはほとんどなく、在宅で介護をしている主介護者等の都合によって利用するケースがほとんどだ。特にこのサービスは家族のレスパイトケア(休養目的)の利用が認められており、利用ケースの7割程度がその目的を占め、残りの3割は家族が何らかの理由で不在となるなどして、在宅で介護できる人がいない期間の利用を求めるものだ。
利用者自身がショート利用したいという希望があるケースなんてほとんどないわけである。
しかもショート利用者は、在宅で何らかの介護を受けている人であり、その中には認知症の人も居られる。当然ショート利用する理由も意味も、状況も把握できずに、自宅ではない場所から自宅に戻ろうとする行動をとる人も少なくはない。
そのようなケースでも、介護のプロ集団であるショートステイ事業所は、認知症で行動・心理症状(BPSD)にも的確に対応して、落ち着いてケアを受けていただけるようにしなければならない・・・それができないのならば、ショートステイという事業指定を返上すべきだ。
そもそも利用者自身にショート利用に認識と理解がなく、帰宅願望がなくならないという理由でサービス提供拒否をすることはできない。それは不当なサービス提供拒否として運営指導対象だが、法令上どうのこうのという前に、介護のプロとして恥ずかしい姿勢であると思う。

上の図は、僕が管理者を務めていた短期入所生活介護事業所のケアプラン(短期入所生活介護計画)の考え方を示したものだ。
認知症があり昼夜逆転がみられる利用を、単に一定期間滞在して安全に過ごすだけではなく、ショート利用期間中に昼夜逆転する理由を見出し、それに対する適切な対応を見つけ出して、帰宅する際にその情報を主介護者の方にフィードバックしている。
そのことによって、利用者も主介護者もショート利用する以前よりより豊かな暮らしが送れるようになることを目的にしている。
そういう知恵と援助技術を持つのが、本来の介護事業者であり、介護従事者であると思う。
そうした使命と矜持を持てない人は、他者の最もプライベートな暮らしに介入する職業に就くべきではないと思う。
※メディカルサポネットの連載、「菊地雅洋の一心精進・激動時代の介護経営」の第2回記事がアップされています。無料登録でどなたでも読むことができます。

第2回は、「介護事業者のカスタマーハラスメント対策を考える」です。カスタマーハラスメントへの毅然とした対応は介護業界でも重要な課題です。ハラスメントにより心身が傷ついてしまった職員が休職や退職に追い込まれてしまうことは避けなければなりません。しかしそれと同時に、利用者の正当なクレームを見逃すことなく、丁寧に対応することも重要です。そのような職場を作るためにはどのような考えや行動が大切か解説します。文字リンクをクリックして参照ください。
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