昨年の大晦日に千葉県の特養で、湯温確認しない湯船に入所者を浸からせて全身やけどで死亡させるという事故が起こるなど、相も変わらず不適切対応による介護事故が絶えない。(参照:当たり前ができない怖さ〜熱湯風呂殺人事件

そうしたケアの基本が護られていない原因の一つは、知識の不足にも起因していると云われ、そのことが虐待原因にもつながっているということについて昨日更新記事、「虐待の発生要因とされる知識不足とはどういうことか?」でも解説したところである。

つまり不適切ケアや虐待は、必ずしも倫理観の欠如によって生ずるわけではなく、対応する従業員に悪気がないケースでも起こり得るわけである。

だからと言ってそれで罪一等が減じられるわけではない。そこで起きた結果の重大さは変わらず、利用者の心身に負わせる傷の深さに差が生ずるわけではないからである。

そうであるからこそ介護を職業とする者は、対人援助のプロとしての正しい知識と確かな援助技術を獲得し、日々それを磨いていかねばならない。それだけ重要な職業に就いているということを忘れてはならないのである。

しかし昨日も、倫理観と知識の両方が欠けて起きた介護事故の一報が届いた。
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共同通信社 2025/01/08 16:00 配信ネットニュースより
横浜市鶴見区の特別養護老人ホームで利用者の女性(90)に高温のみそ汁を飲ませ、食道などにやけどを負わせたとして、鶴見署は8日、傷害の疑いで、同市港北区、元介護士平井良侑(ひらい・よしゆき)容疑者(29)を逮捕した。署によると、施設側から残業を指示され「(冷ます)時間を短縮させるためだった」と容疑を認めている。女性は一時、重体となった。

容疑者は沸騰直後のみそ汁を薬飲み器に入れて、女性の口に流し込んだとみられる。苦しむ様子に気付いた容疑者が施設側に「入所者が女性に熱いお茶を飲ませた」と報告。施設の調査で容疑者がみそ汁を飲ませたことを認め、昨年11月30日、施設側から連絡を受けた女性の家族が被害届を出した。

逮捕容疑は昨年11月24日午後6時10分ごろ、当時勤務していた鶴見区獅子ケ谷3丁目の特別養護老人ホームで、女性に高温のみそ汁を飲ませ、食道や唇などにやけどを負わせた疑い。
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沸騰したみそ汁をそのまま利用者の口に流し込んだ際の容疑者の心境はどのようなものだったのだろう・・・。
恐怖の味噌汁
まさかその行為が、利用者の食道を焼き、生命を危険にさらすなどということは想定していなかったのだろう・・・だが熱湯を無理やり口に流し込まれた場合の痛みや苦しみは想定・理解できなかったわけがない。

当初、自分の行為を隠して、他の利用者が熱いお茶を飲ませと虚偽の報告をしているのだから、事の重大さには気づいたのだろうが、それは後の祭りである。

それにしてもみそ汁を冷ます、あるいは冷めるまで待つなんてことは、さして時間もかからないし面倒な行為でもないと思うのだが、なぜそれができなかったのだろう・・・意に沿わぬ残業を命じられたことが、このような危険・不適切行為につながったものだろうか。

それにしても理解不能な、人としてあるまじき行為である。

特養という場所は、要介護者の方が住み慣れた自宅を離れ、自分の人生の最晩年期を過ごす場所として住み替える居所であり、それは終生施設というの意味を持つ場である。そうであるからこそ特養とは、利用者にとって最も安全で安心して暮らすことのできる場所でなければならないはずだ。

そのような場所で起こった信じられない不適切行為。それが原因で生じた取り返しのつかない被害・・・。

このような事・事件によって介護施設及び介護事業全体に対する社会の信用は失墜の一途を辿らざるを得ない。そのようなことが繰り返されないようにしなければならない。

本件についても、すべての介護事業者において従業員に伝達し、このような行為が起きる要素をゼロにするように対策を講じなければならない。


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