今年2025年は団塊世代の方がすべて75歳以上の後期高齢者になる年である。

当然それらの方のすべてが心身ともに健康でいられるわけがなく、『要介護状態』になる人が増えることになる。このように大きな塊の世代の方が介護を必要とするわけである。

財源論から介護給付費が削られる可能性が高い次期報酬改定を見据えると、単価が削られた分を顧客増で補う必要があり、団塊世代の方々から選ばれる介護サービス事業者となっていく必要がある。

スマホやタブレットを日常的に使いこなしている団塊世代の方々に選ばれる事業者になるためには、単にサービス提供ができるというだけではなく、いかにお客様に対して、「おもてなしの心ホスピタリティ精神」を持って接する必要がある。

だがホスピタリティ精神とは、当たり前のことを当たり前に行うという前提があってはじめて生まれる精神である。介護サービスの基本ができていない場所で、そうした精神は生まれず、それは顧客に選択されないサービスと化し、やがて事業の衰退につながりかねないのである。

しかし昨年大晦日の特養で、そうした介護サービスの基本中の基本が行われていないことが原因で悲惨な事故が起きている。事故概要は下記である。
------------------------------------------------
(産経新聞ネット2025/1/2 23:55配信記事より転載)
昨年12月31日午後2時5分ごろ、千葉県市川市大町の特別養護老人ホーム「なごみ」で、入浴介助を受けていた女性(89)が全身にやけどを負い、搬送先の病院で死亡した。施設側は「浴槽の湯が高温だった」と話しており、市川署は、湯の温度管理が不十分だった可能性があるとみて、業務上過失致死容疑も視野に捜査する。

署によると、女性は施設の入居者で金野フミさん。職員2人の介助を受けて入浴中に体調が急変した。体の広範囲にやけどを負っており、約11時間後に同県浦安市内の病院で死亡が確認された。
特別養護老人ホーム「なごみ」
------------------------------------------------
入浴中に全身やけどを負ったのだから、原因は浴槽内の湯温だとしか考えられない。通常の湯温は40度〜42度くらいだろううから、それよりかなりの高い湯温であったのだろう・・・しかしそれって利用者を湯船につからせる前に、介助者が手で湯温確認するのが当たり前であり、それが出来れおれば決して起こされなかった問題である。

しかし浴槽の湯温が高すぎて熱湯風呂と化し、利用者を火傷死亡させた事故は今回が初めてではない。

2014年3月には甲府市(参照:当たり前のことができない恐ろしさ)・2015年3月には浜松市(参照:壊れないように護るのが介護のはずです)・2024年3月にも札幌市(参照:過去の教訓が生かされずに繰り返された死亡事故)で同じように入浴中の火傷死亡事故が起きているのだ。

そうした事故を教訓にして、2度と同じ事故が起こらないようにする対策がとられていないということになる・・・これはもう熱湯風呂殺人事件と云われても仕方ない状態だ。

それでは介護事業者が社会全体から信頼を得ることはできない・・・本来、要介護高齢者にとって最も安全で、安心して暮らせる場所にしなければならない介護施設・居住系施設で、入浴する浴槽の湯温管理という基本中の基本が行われていないことは、介護事業に対する不信感を助長させ、そうした事業に財源支出を増やす必要はないという論調に結びつきかねない問題でもある。

介護事業者・・・特に介護保険施設や居住系施設の経営者・管理職の皆さんは、年明け最初の職員に対する訓示の中で、この事故を伝えて、改めて介護の基本である安全確認を検証・見直すように注意を促す必要がある。

こうした事故は根絶していかねばならないことを肝に銘じてほしい。


※別ブログ「masaの血と骨と肉」もあります。お暇なときに覗きに来て下さい。

北海道介護福祉道場あかい花から介護・福祉情報掲示板(表板)に入ってください。

・「介護の誇り」は、こちらから送料無料で購入できます。


masaの看取り介護指南本看取りを支える介護実践〜命と向き合う現場から」(2019年1/20刊行)はこちらから送料無料で購入できます。
きみの介護に根拠はあるか
新刊「きみの介護に根拠はあるか〜本物の科学的介護とは(2021年10月10日発売)Amazonから取り寄せる方は、こちらをクリックしてください。