今年度の補正予算案が17日の参議院本会議で可決された。
その中には常勤の介護職員1人あたり、およそ5.4万円を支給するという一時金(補助金)の予算として計上された806億円も含まれている。
しかし勘違いしてはならないことは、これは介護職員等処遇改善加算の上乗せではないということだ。補正予算によって支給されるものは、恒久的賃上げにつながるものではなく、あくまで一時金でしかない。
来年度以降、今回の806億円が上乗せされるわけではないのである。既に来年度の賃上げ分は予算化されており、かねてよりアナウンスされているように今年度算定する処遇改善加算の一部をストックして来年の支給に回して初めて、今年度に比べて2.0%の賃上げが来年度に可能となることには変わりがないということだ。
その2.0%に、さらに介護職員1人あたり5.4万円の上乗せがあるということではない。
そういう意味では、極めて中途半端で意味のない一時金のように思えてならない。
それでももらえないより、もらえた方が良いと肯定的に捉える人が多いのだろうか・・・逆にわずかな補助額にがっかりして、介護職を続ける気が失せる人も少なくないのではないかと懸念する。
それに加えて別な問題が生ずる・・・それは担当事務職員の過重労働につながりかねないという問題である。
この補助金の支給実施要綱などの通知については、「年明けのできるだけ早い時期を目指す」と厚労省担当者が説明しているが、それは早くとも1月下旬になろうと思える。
そうなると事務担当者は大変である。年度末に向けて来年度予算を組む時期に、この補助金の支給要件を確認して、補助申請を行わねばならない。
しかもこの時期は、今年度から全サービスに義務化された介護サービス事業者経営情報の提出時期に重なるのだ。
本来ならば、介護サービス事業者経営情報提出は会計年度終了後3月以内に提出するルールでえあるが、ただし初年度については、報告期日を2024度末まで報告が必要だからである・・・すなわち2023年4月から2024年3月までの決算期のデータを2025年1月から3月までに提出するのが今回のルールなのだ。
このように事務負担が重なって大変なことになる。そうした業務を担う事務職員にも、今回の補助金は手渡したいと思うのが人情だろう。それは介護事業者の裁量で可能となるはずだが、そこでまた問題が生ずる。
報道などを見て、多くの介護職員は自分も年度内に5.4万円を受け取ることができると思っているからだ。しかしこの金額は、介護事業者が補助要件をすべてクリアして、最大限に算定したうえで、介護職員のみに支給する場合に、常勤職一人当たりに5.4万円支給できるという意味である。
支給要件の細部は要綱で明らかになるが、いまのところそれは処遇改善加算の上位区分の取得要件などと重なるように設計するとされているので、最大支給を受けられるかどうかはそれ次第だ。
しかも介護職以外にも補助支給するとなれば、介護職員一人当たりに渡る額は減ることになる。場合によってはその額は5.4万円に遠く及ばずに、その半額以下ということにもなりかねない。
介護事業者は、このことを今から丁寧に介護職員に伝えておかないと、補助支給を受けるときに、受領額に対する不満が噴出する恐れがある。その際には、経営者が搾取していると勘違いする職員が出てきて、それが経営者や管理職への不信感につながり、職場環境の悪化につながりかねない。
そうならないように、せっかくの一時金が新たな揉め事のきっかけにならないように、今から全職員に対して正しい情報提供を行い、要綱が示された際には、丁寧な説明の場を創る必要があると思う。

ただし、このような説明は全従業員を一堂に介してリアルタイムで行う必要もなく、オンラインを通じて、録画も利用しながら情報を伝えればよいのである。従業員はそれを自分の空いている時間に、自分にとって便利な場所で確認すればよいのだから、これこそICT活用が求められる。
このことに関しては決して手を抜かないように注意してほしい。
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手続きに関する事務職の負担増など益々負担も増え、現場職員は減るばかりで、福祉の未来がどうなるか?
真剣に考えて行動してくれる政治家が必要だと強く思います。
masa
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