厚労省が主管するケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会は2日、当面の対策の方向性を描いた「中間整理」を大筋でまとめた。(資料

この中で人材確保に向けた施策の一環として、資格を持っていても現場で働いていない「潜在ケアマネジャー」の復職支援を盛り込んだ。

その支援策とは、復職時の要件となる再研修の負担を軽減するというもの。

具体的には、シニア層らを後押しする観点から実務経験を踏まえた研修の簡素化を図るほか、オンライン化も含めて研修を受講しやすい環境の整備を進めるという内容だ。
潜在ケアマネなんてわずか。
果たしてこんな支援策で一度ケアマネをリタイヤした人が、再びその仕事に復帰する気になると思っているのだろうか・・・。

そもそもケアマネジャーがリタイヤする主たる原因は、更新研修の負担ではない。更新研修自体は無駄で意味がないと思っているケアマネは少なくないが、だからと言ってそれを理由に職務を放棄しようとまで思う人はほぼいない。

介護職員の度重なる処遇改善に比して、まったくその恩恵を受けることができない居宅ケアマネは、加重労働の中で、さらに担当者数を増やさねば給与が上がらない。これ以上の業務負担増に耐えられないとしてリタイヤしていくのだ。

つまりケアマネジャーという職務を続けるのをあきらめて、他職種あるいは他業種に転向する人の多くは、ケアマネ業務に対する国の評価が低く、業務負担に見合った対価が与えられないことに絶望し将来性がないとして転職していくのである。

よって本当に一度リタイヤしたケアマネジャーを復帰させようとするならば、居宅ケアマネの抜本的な処遇改善策を盛り込む必要があるのだ。

しかし、「ばらまき一時金では何も変わらない」で指摘したように、今年度の補正予算案に計上された処遇改善補助金の支給も居宅ケアマネは対象外という扱いに絶望感を持っているケアマネジャーも多く、生半可な処遇改善策では、再びケアマネ業務を行いたいという動機づけにはならないだろう。

ましてや更新研修を受けやすくしたとしても、「それがどうした!!」と言って終わりである。

国は「潜在ケアマネジャー」を掘り起こすなんて言っているが、一度リタイヤしたケアマネジャーとは、評価が低すぎるケアマネジメント業務の過去を洗い流したいという思いを持つ、「洗剤ケアマネジャー」と言っても良い気持ちを持っているのだ。

その人たちにとって、今回の方針は余りにも人を馬鹿にしたものとしか言いようがない。

そもそも国が過去に実施した潜在人材の掘り起し策は、成功したためしがない。

例えば、「働かない理由〜潜在的有資格者は掘り起こせない。」で指摘したように、介護福祉士だって国の策が働いて現場復帰したケースなど、ほとんどないと言ってよい。

愚策に愚策を重ねて恥じないのはどうしてなんだろうか・・・官僚にしても、検討会の委員にしても、頭は良いのだろうが、あまりにも世間知らず・現場知らずである。

過去に学ばず空論ばかり繰り広げる人間は、知性に欠けると云われても仕方がないと思う。


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