今年3月10日に開催された日本介護経営学会のシンポジウムで厚生労働省・老健局長(当時)の間隆一郎氏が、「ケアマネジャーの皆さんはシャドウ・ワークが非常に多い」と述べ、無償で行うケアマネジャーの業務があることに指摘した。
このことがきっかけでシャドウワークという言葉が関係者の間で流行後のように飛び交って、あたかもそれがただ働きという意味であり、ケアマネジャーがすべきではない業務のように思われている節がある。

しかしシャドウワークの本来の意味はただ働きではない・・・・シャドウワークとは、無報酬の労働ではあるが、報酬や対価が発生する労働のために不可欠な労働であり、その意味で間接的には報酬が発生しているとみなすことのできるものという意味である。
例えば居宅介護支援におけるサービス対象者は、担当利用者個人であって、世帯単位でサービスを提供するものではない。
しかし担当利用者が高齢者夫婦世帯の夫である場合、家事を行い夫の暮らしを支えている妻の存在は決して無視できない。その妻の生活上の様々な相談事に対応することによって、妻が夫の主介護者として在宅生活を支えることができているとしたら、妻は利用者ではないから相談には応じられないということにはならない。サービス利用者ではない妻の訴えに対しても、居宅ケアマネが耳を傾けることによって、居宅介護支援費を算定し続けることができる結果にもつながるのである。
僕が過去に書いた、「認知症の父の言葉にショックを受けた娘のケア」という記事では、居宅ケアマネが担当していた認知症の男性が、同居している長女に卑猥な言葉を掛けたことがきっかけで、長女が実家を出てひとり暮らしをはじめ、父親のいる実家に寄り付かなくなった・・・しかし長期的に見れば、病弱な妻だけで認知症の夫の在宅生活を支えるのは困難であるとして、実家を離れた長女へのアプローチが欠かせない支援となった。
これも直接費用の発生しない支援であるが、認知症の男性の在宅生活を支える重要な支援であり、間接的に居宅介護支援費を算定し続ける要素の一つになっているわけである。
このように、影で主業務を支える対応をシャドウワークと呼ぶのであるから、それは不必要な業務とは言えない。
ケアマネジャーをはじめとしたソーシャルワーカーの方々は、そうした必要不可欠なシャドウワークというものがあることを理解したうえで、対人援助のプロとして働いている以上、重要な役割と責任が生ずる問題については、それに見合った対価を与えてほしいと訴えるべきである。
例えば、『適切なケアマネジメント手法の策定・普及推進(2016年〜10か年計画)』によって、今年度から介護支援専門員の法定研修のカリキュラムが見直され、そこでは介護支援専門員が社会的要請に対応できる知識や技術を修得できるようにするとして、「仕事と介護の両立支援」や「ヤングケアラー」へのアプローチが科目に組み込まれ、その役割を担うように求められている。
しかし介護離職防止やヤングケアラー支援は社会として求める重要な役割で、けっしてシャドウワーク化させてはならないものである。
こうしたことこそ介護支援専門員の主業務として、きちんと対価を与えたうえでその任に就けるようにしなければならない問題だ。
それらのことをきちんと訴えていかねばならない。
このことに関連して、ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会が公表した中間整理では、居宅ケアマネが法定業務の範囲を超えて行っているものについて、「保険外サービスとして対応し得る業務」・「他機関につなぐべき業務」・「対応困難な業務」に分けて示している。
このことについては明日の更新記事において改めて論評するとしよう。今日は長くなったのでここで一旦終了としたい。(※ケアマネジャーの業務分類によって変化は起きるか?に続く)
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