昨年3月に、「利用者画像のSNSアップは慎重に。」という記事を書いて、同意能力の疑われる利用者の同意を根拠に、利用者画像をSNSにアップする不適切性を指摘した。

しかし同記事に書いた危険性より、より重大な危険性が増している。

それは犯罪を誘発する危険性である。介護事業関係者はこのことを十分理解し、基本的に利用者画像は事業者のSNSにはアップしないことや、従業員個人のSNSへのアップを原則禁止することを徹底してほしい。

というのもその犯罪は、画像アップされた介護サービス利用者の命や財産を奪う結果になりかねないからだ。
介護事業者がSNSで注意すべきこと
介護事業者のSNSを悪用してどのよう犯罪行為が行われているのかということを実際に起きた事件から考えてみよう。

北海道の事件例としては、通所サービスに通うひとり暮らしの高齢者宅で、空き巣被害が発生したケースがある。

某通所介護事業所のSNSに、利用者が機能訓練を受けている姿や食事を摂っている姿が頻繁にアップされていた。そこに目をつけた犯人は、そこから利用者を特定し自宅も特定した。そしてその利用者がひとり暮らしであることを確認すると、通所介護に通う曜日をSNSにアップされた曜日から特定して、利用者が通所介護を利用している日に自宅には誰もいなくなることが確実であることから、その曜日のサービス利用時間に空き巣を行っていた。

同じ通所介護事業所の複数の利用者が、自分が通所介護を利用している間にこのような空き巣被害を受けていることが分かったことにより、警察が当該通所介護事業所の利用者宅を、サービス提供日に張り込んでいたことによって犯人は逮捕に至ったため、SNSが原因となっていることも明らかになった。

こうした犯罪が行われ、それが介護事業者のSNSの画像が犯行動機に繋がっているケースが増えた場合、当然介護事業者に刑事責任はなくとも、道義上の責任は問われていくことになる。

さらに言えば、こうした犯罪の存在は、介護サービス利用者が、闇バイトの被害者になる恐れも増している。

訪問介護事業者のSNSに、ひとり暮らしの利用者情報を安易に上げた場合、空き巣どころか強盗被害にもつながりかねない。

現に日本全国で行われている、ひとり暮らしの高齢者を狙った強盗被害は、ひとり暮らしの高齢者情報を手に入れた胴元が、ネットで闇バイトに応募する人間を集めて、恐喝などの手段を織り交ぜながら、ひとり暮らしの高齢者を狙っているのである。

そうしたひとり暮らし高齢者の情報源が介護事業者のSNSであった場合、その介護事業者の責任は免れないだろう。

このように介護事業者のSNSに利用者の画像をアップする行為は即ち、介護サービス利用者の命と財産を危険にさらす行為につながることを肝に銘ずるべきである。

介護事業経営者や管理職の方々には、一刻も早くその対策を講ずる責任がある。
菊地雅洋の波乱万丈選ばれる介護経営塾
メディカルサポネットの連載、「菊地雅洋の波乱万丈選ばれる介護経営塾」の第12回配信記事、『介護のプロとして求められる思考回路』が12/2アップされました。文字リンクをクリックして参照ください。


※別ブログ「masaの血と骨と肉」もあります。お暇なときに覗きに来て下さい。

北海道介護福祉道場あかい花から介護・福祉情報掲示板(表板)に入ってください。

・「介護の誇り」は、こちらから送料無料で購入できます。


masaの看取り介護指南本看取りを支える介護実践〜命と向き合う現場から」(2019年1/20刊行)はこちらから送料無料で購入できます。
きみの介護に根拠はあるか
新刊「きみの介護に根拠はあるか〜本物の科学的介護とは(2021年10月10日発売)Amazonから取り寄せる方は、こちらをクリックしてください。