政府が29日に閣議決定した今年度の補正予算案・・・そこには常勤の介護職員1人あたり、およそ5.4万円を支給するという一時金の予算として806億円が計上されている。

この背景には、介護職員と他産業・他職種との給与格差が広がっているという認識がある。

令和6年度介護報酬改定においては、介護職員の処遇改善分の改定率が+0.98%であったが、国はそこでは令和6年度に 2.5%、令和7年度に 2.0%のベースアップへとつながる財源措置をとっているとアナウンスしている。(※だからこれ以上の加算上乗せはしないと言う意味でもある。

しかし今年の春闘における他産業のベースアップは5%以上となっている状況から、全産業平均給与より低いと云われている介護職員の給与ベースが、さらに平均ベースとの差が広がり、益々介護職員の成り手が減るのではないかという懸念が広がった。(参照:賃上げ率の民間との格差広がる介護事業
貧困介護
そのため更なる処遇改善につながる財源措置を求める声が介護業界初団体から挙がっていた・・・そうした要望に応えるように政府は、更なる介護職員の処遇改善については経済対策として実施する考え方を示していたところである。

その具体策が今回の補正予算で示されたわけだが、それは介護業界が求める改善レベルには程遠く、期待外れという声が高まっている。

この補助金の支給要件の詳細は今後決定されるが、今の時点では介護職員等処遇改善加算の上位区分の算定事業者を対象とする予定である。つまり生産性向上に取り組むなどの職場環境要件をクリアしないとならないという意味で、これによって介護職員等処遇改善加算の上位区分の取得率もセットで上がる仕組みを考えているようだ。

また補助金の使途は事業者の裁量に委ねられるため、介護職員に限らない多職種の賃上げ、職場環境の改善などの経費に充てることも可能とされる予定だ。

すると現行の処遇改善加算も多職種に配分している事業者が多いという実態を見ると、補助金の配分も介護職に限らず広く配分する事業者が多くなるだろうから、「介護職員1人あたり、およそ5.4万円」という額は現実にはあり得なくなる。常勤の介護職員であってもわずか2〜3万、あるいはそれ未満の支給にとどまるのではないだろうか。

そうするとそんな低額補助金支給に何の意味があるのかということになる。仮に5.4万円支給されたとしても、そのことで介護職の待遇が良くなったと感じる人も、介護職になりたいという動機づけを持つ人も居ないだろうから、その額にさえ達しない一時金をもらって嬉しがる人も居ないのではないかと想像する。

このようなばらまきでは、何の意味もない。

しかもこの補助金は、前述したように処遇改善加算の取得とセットとなっているため、相も変わらず居宅介護支援事業所の介護支援専門員蚊帳の外である。

施設ケアマネは、わずかな額とは言え補助金の配分を受けることができるのに、居宅ケアマネは配分がゼロであることは、益々『居宅ケアマネを続けよう居宅ケアマネになりたい』という動機づけを低下させるものでしかない。

よって意味がない補助金どころか、居宅ケアマネのモチベーションを下げるという意味では、デメリットしかない補助金であるとさえいえるものだ。

どうして政治家や官僚がそのことに気が付かないのだろう。偉くなると頭がぼけてしまうのだろうか・・・。
菊地雅洋の波乱万丈選ばれる介護経営塾
メディカルサポネットの連載、「菊地雅洋の波乱万丈選ばれる介護経営塾」の第12回配信記事、『介護のプロとして求められる思考回路』が本日アップされました。文字リンクをクリックして参照ください。


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