2021年度(令和3年度)の基準改正では、すべての介護事業者にハラスメント対策を講ずることが求められた。

そこでは従業員側や事業者側に非がないにもかかわらず、怒鳴り散らしたり、恫喝してきたりする顧客によるハラスメント行為・・・カスタマーハラスメントを防止する措置が求められた。

読者の皆様が所属する介護事業者は、この対策をしっかり取っているだろうか・・・実効性のない形骸化した対策と成ってはいないだろうか。

昨今の介護人材不足を鑑みると、カスハラ被害で貴重な人材を失うのは大きな損失であるし、カスハラ対策を実際には機能しないアリバイ作り程度しか講じていない職場には、人材が集まらない点を考慮すると、基準がどうこう言う前に、人材マネジメントを含めた職場環境の改善という面から、実効性のあるカスタマーハラスメント対策が求められる。

カスハラ対策で重要となるのは、被害者への配慮のための取組(メンタルヘルス不調への相談対応等)であるが、特に重視してほしいのは、カスハラ行為者に対して、被害者自身に対応させないことである。

出来れば被害者を外して、担当者が対応すべきであるが、何らかの事情で被害者の直接対応が必要な場合も、必ず担当者等の別の職員が立ち会って、被害者が加害者に対応する行為はあくまで副次的行為としなければならない。そうしないと対応の場で罵詈雑言を浴びた被害者が、そのことでメンタル上、取り返しのつかない深い傷を負って再起不能となることが多いからだ。

それは絶対に防がねばならない。

ところで昨今問題となっているカスハラ行為とは、被害者に直接罵詈雑言を浴びせる行為ではない、ネット上の問題が大きくなっている。

SNS上で企業や社員の名誉を棄損させるほか、SNSへのアップロードを脅しに使うケースもある。

例えば、介護施設等を訪れた家族が従業員をスマホで隠し撮りして、自分のSNSに、「ふてぶてしい態度で、利用者から嫌われている」などと勝手にアップするケースがある。
隠し撮り被害
勿論、そうした行為を非難する前に、本当に利用者に対して失礼な対応をとっているのなら、それは改めなければならない。しかしネットカスハラ被害の多くは、加害者の勝手な思い込みや、気に食わない従業員を貶めようとする謂われなき中傷である。

そういう行為は決して許されない。

さらに女性従業員を隠し撮りして、「可愛い」というハッシュタグをつけて画像をネット上に挙げてるケースが見られる・・・可愛いというのは誉め言葉だから、カスハラにならないなんて考えてはならない。

その行為によって、ネット上に姿をさらされた女性従業員は、名前と勤務先のみならず自宅の住所まで突き止められてストーカー被害に遭うケースも実際にあるのだ。

この場合、その女性従業員は引っ越しを余儀なくされたり、仕事を辞めなければならなくなるにとどまらず、最悪ストーカーによる暴行被害にあうこともないとは言えないのだ。

だからこそこうした行為を未然に防止するカスハラ対策も求められる。介護施設・介護事業所内で、訪問者がスマホ等を使って写真撮影する行為は、原則禁止とすべきだろうと思う。

禁止行為を行っている場合には、毅然として注意対応する必要もあるだろう。

どちらにしても従業員のプライバシーとメンタルを護るという視点から、カスハラ対策を随時見直していく対応が求められている。

経営者や管理職の方々は、この問題の深刻さを理解して、早急なる対策を講じていただきたい。


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