今から12年前・・・2012年の介護事業経営実態調査の結果、収支差率が+10%を大きく超えていた特養は、非課税法人であることを利用して内部に多額の留保金を抱えていると批判された。

繰越金と呼ばれていたものが、内部留保と呼ばれ始めたのもこの時からである。

その為、介護報酬改定では、「もうけ過ぎている特養の報酬は削られて当然」という流れが創られて、マイナス改定が続いた。

同時に社会福祉法の改正により、一定額以上の繰越金は社会福祉充実残額と規定され、社会福祉充実残額が生じた社会福祉法人には、社会福祉充実計画に基づく社会福祉事業および公益事業もしくは地域貢献事業などの実施が義務付けられた。

これによって社会福祉法人内の繰越金が一定額を超えたら吐き出す仕組みが法的に規定されたわけである。

僕は収支差率10%超の批判が強まった時期に、社会福祉法人の特養施設長に任命され、内部留保を吐き出させる政策誘導の中で、その逆風をもろに受けながら施設経営を行ってきたので、その流れは良く記憶している。

そのような流れの中で、特養の収支差率は年々低下していったわけであるが、ついに2022年度の介護事業経営実態調査で、特養の決算収支差率は−1.0%と2001年の調査開始以降で初めてマイナスに陥ったのである。
介護事業経営実態調査
当然物価高と人件費高騰の波がさらに強まっている2023年度決算数字はそれよりもっと厳しくなるはずだ。だが今年度の介護報酬改定は、わずか+1.59%でしかなかった。

そうした中で介護事業関係者からは、物価高に対応した政府支出による臨時の介護報酬改定を求める声が挙がっているが、財務省の姿勢は厳しい。

10/16に行われた財政審(財政制度分科会)で財務省の担当者は、「一般に物価上昇局面では、政府支出による対応を求める声が増加することの認識はあるが、医療や介護など社会保障費の膨張を加速させる懸念がある。」・「物価や賃金の伸びを給付に反映した場合、保険料率のますますの上昇につながり、現役世代の負担が更に増えることにも留意が必要。」として、介護関係者の要望に対し実質的なゼロ回答を示している。

厚労大臣は11/6に、政府が今月中にまとめる新たな経済対策をめぐり、介護・福祉職の賃上げを盛り込む方向で検討する方針を表明してはいるが、それとて介護事業者の収益には結びつかないものである。

このように、以前として介護事業経営者にとっては明るい兆しは見えてこない。

そのような中、東京商工リサーチがまとめた11月1日時点の集計(速報値)によると、今年1月から10月の介護事業者の倒産件数は144件で、これまで最も多かった2022年の143件を早くも上回ったことが明らかになった。

倒産事業者のサービス種別をみると、訪問介護が71件・通所短期入所が48件・有料老人ホームが11件、その他が14件で、これらは全て前年を上回っている。

倒産件数の急増の背景には、深刻な人手不足、物価の高騰、利用者獲得をめぐる競争の激化などがあると思われるが、今年度の介護報酬改定が事業者に打撃を与えた可能性も否定できない。

特にマイナス改定となった訪問介護は、収益悪化が見込まれる中で、訪問介護員の確保もますます難しくなったとして事業経営者が先の見込みが立たないことから、経営者が事業継続意欲を失ったケースも少なくないと思われる。

今年はまだ2ヵ月残っており、数字はこれから更に大きくなる見通しだ。

このような事実と向き合った時に、介護事業経営者はどのように対策を考えたらよいのだろうか。

ということで、ここから本題に入りたいところであるが、少し文章が長くなり過ぎた。また僕はこれから北海道を代表するカリスマ介護事業経営者の方とお会いする予定がある。

その為、今日のブログ記事はここでいったん締めて、明日続きを書きたい。

明日の記事タイトルは、「経営者は従業員に収益を挙げる動機づけを与えてください」とする予定だ。是非そちらも参照してほしい。

それでは明日の記事更新をお楽しみに。


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