今年度の基準改正では、介護保険施設に協力医療機関指定義務が課せられた。

これによって介護保険施設は、在宅療養支援病院や在宅療養支援診療所、地域包括ケア病棟(200 床未満)を持つ医療機関、在宅療養後方支援病院等の在宅医療を支援する地域の医療機関(以下、在宅療養支援病院等)と、入所者の急変時対応などの要件を満たす協定を交わす必要が生ずる。

在宅療養支援病院等とは入院対応は極めて短期間として、できるだけ早く退院させ在宅で療養することを支援する医療機関だ。基本的には入院は7日間、最長でも14日間とされているのだ。

勿論、そのような短期間で病気が完全治うするとは限らない。むしろ完治しない場合が多いだろう。だがそれも想定済みで、今後の医療機関は病気を完治させるまで患者を入院させるのではなく、急性期対応を終えた患者をできるだけ早期に在宅復帰させて、暮らしの場で療養を支援する機能を併せ持つことが求められているのだ。

介護保険施設もその流れの中で、が求められており、入所者が一旦入院しても、急性期治療が終わった後は、必ず施設に戻って施設内で完治までの治療と療養を行うことが求められているという意味だ。

その為、指定義務化される協力医療機関として満たすべき要件の一つに以下のものがある。
・入所者が協力医療機関等に入院した後に、病状が軽快し、退院が可能となった場合においては、速やかに再入所させることができるように努めることとする。

これは努力義務でしかないとは言っても、指定協力医療機関との間での協定内容ともいえるわけだから無視するわけにはいかない。

すると老健施設の対応が今までと大きく変わってくる・・・老健施設は入院の際に外泊時費用が算定できず、入院=退所という扱いであった。その為、治療が短期間で終わって退院できるケースでも、再入所に当たっては最初の入所と同じ手続き手順を踏む必要があり、場合によってはかなり長期の待機を余儀なくされることもあった。

しかし今後は、いったん退所したのだから即再入所はできないという対応はできなくなる。老健の責任として、入院した人が短期間で施設に再入所できるようにベッドを空けて待つことも必要になる。

これと関連して、特養の3月ルールも形骸化すると想定される。なぜなら指定協力医療機関は3月もの長期間入院をさせてくれないからだ。

今後の施設入所者は、一旦入院しても必ず短期間で施設に戻って、施設内で病気の治療を継続するということが当たり前になるのだ。
秋の風景
このことと関連しているのが、介護支援専門員の法定研修カリキュラムの見直しである。24年4月〜の法定研修では、日常的な生活支援等の基本ケアに加えて、脳血管疾患大腿骨頸部骨折心疾患認知症誤嚥性肺炎の予防というケアマネジャーが取り扱う可能性が高い5つの疾患別に、想定される支援内容やアセスメント・モニタリングの視点をまとめる内容を組み入れている。

このように基本ケア疾患別ケアで構成するケアマネジメントの実現を目指しているが、それはとりもなおさず居宅サービス及び施設サービス両者ともに、暮らしの場で病気療養する利用者に相対する介護職員が疾患別ケアの意識をもって対応することをも意味している。

例えば心不全。心不全発作を一度でも起こした人は、心臓の機能は元通り取り戻すことはない。ADLが低下していなくとも、心臓の機能は低下しているのだ。その為、発作前と発作後のアセスメント上に変化がないからといって、同じ生活をさせていると心不全発作は短期間で再発し命の危険性を増すことになる。

だから発作前のように何でも自分でするのではなく、人の手助けを受けながら無理しない暮らしを送ることが重要で、在宅者であれば生活援助を増やして、家事を休むことが必要になる。施設利用者も長い距離は無理して歩行せずに、上手に車椅子を使うことなども必要になる。

そして何より心不全は、「塩分過多」と「水分過多」に気を付ける必要があることを、全従業員が認識して、「健康な人と同じ食事にしてはいけない※塩分摂取には特に注意が必要)」・「水分は必要最低限に制限が必要」という意識を持つことが大事だ。

カルト宗教のような竹内理論による馬鹿げた考え方で、心不全発作を起こした人にも、食事以外に1.500mlもの大量の水分を摂取させるようなことが決してあってはならない。それは殺人行為に等しい行為と言えるからだ。

心不全発作を一度でも起こした人には、我々介護支援者は寄り添うだけではダメなのである。そうした人には、「介護もしながら、医療対応も重要」という意識を持ちながら、基本的な医療の知識も併せ持って対応していかねばならない。

その為の学びの場が特に重要となるだろう。それを創り出すのが経営者や管理職の役割として重要となってくる。


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