介護保険サービス利用に際する大きな誤解(その1)より続く。
上に文字リンクをつけた昨日のブログ記事に書いたように居宅サービス計画書は、介護保険サービス利用の絶対条件ではない。
利用者が償還払いでよいと希望すれば、居宅サービス計画は作成せずともサービス利用して保険給付されるのである。また償還払いを理由に、サービス事業者がサービス提供を拒否することもできない。それは正当な理由によらないサービス提供拒否として運営指導対象となる。
ところで償還払いサービスであれば、居宅サービス計画書を作成しなくともよいという法令ルールは、介護人材難が益々進行する我が国では、地域住民を救済する道につながる可能性がある。
なぜなら居宅介護支援事業所や居宅ケアマネが少なく、計画担当者が見つけられない地域では、ケアプランを作成しなくてよい償還払いサービスを活用することで、ケアプランが作成できずに介護サービス利用ができないという介護難民発生を防ぐことができるからである。
そういった視点からも、居宅サービス計画書は保険給付サービスを利用する絶対条件ではないという法ルールを理解し、活用してほしい。
それはさておき、今日論ずるのは介護保険制度上のもう一つの大きな誤解が生じている、訪問介護の生活援助提供ルールである。

(※画像は僕の顧問先である日本介護センターの公式サイトより。地域で活躍するヘルパーさん。)
生活援助の提供ルールについて、ネット上の情報の中には、「同居家族がいる場合の生活援助は、原則利用できない」などと書かれていたりする。
確かに同居家族がいる要介護者に対する生活援助は、一定条件化で制限が生ずるルールとなっている。しかしこの制限は単純に同居家族がいるか・いないかで考えるべき問題ではない。同居家族がいても、何らかの理由で家事が困難であるとか、利用者の暮らしを支える同居形態になっていないなど総合的な判断においてはじめて生活援助は制限されるのである・・・つまり同居家族がいる場合には生活援助が利用できないなんて言う原則なんて存在しないのだ。
同居家族がいるという理由のみで、生活援助の制限を行ってはならないということについて、厚労省は制度施行以来数回に渡って通知を発出している。
例えば、2009年12/25に発出された老健局振興課長通知、「同居家族等がいる場合における訪問介護サービス等の生活援助の取り扱いについて」では、「生活援助等において同居家族等がいることのみを判断基準として、一律機械的にサービスに対する保険給付の支給の可否について決定することないよう〜(以下略)」と都道府県担当課に求めている。
厚労省のパンフレットでは、同居家族がいる場合に、その家族に障害や疾病がなくとも事情があって家事ができない場合も保険給付の対象としており、「家族が介護疲れで共倒れの恐れがある場合」という具体例も挙げられている。
例えば高齢者夫婦世帯の夫が要介護者で、妻が要介護非該当(自立)で常時家にいて家事ができていたとしても、妻の負担を考慮して家事援助を組み込むことは不適切ではないばかりか、大いに必要とされるサービスであると云えるのである。
同居家族がいても、生活援助をできるだけ適切に組み込む判断が必要なケースが少なくないのに、当の介護支援専門員自身が、一律機械的に同居家族がいる利用者に対する生活援助は提供できないかのような文章を書いてネット情報として流布させている状態は不適切極まりない。
その状態は、まるで対人援助の専門家自身が、介護サービスのバリアを創り出しているようなものであり、対人援助の専門家として恥ずべき浅はかな考えと言えよう。
居宅ケアマネは、もっとこの運用を柔軟に考えて、できるだけ利用者の暮らしの質が向上する方向で生活援助プランを組み込んでもらいたい。
制限は馬鹿でもできるが、例外を受難に適用するという工夫は知恵のあるものにしかできないということを理解してほしい。
頭の固い役人の真似をすることはないのである。
介護支援専門員をはじめとした関係者は、このことを踏まえたうえで、利用者の福祉の低下を招かぬようにしてほしい。
余談だが介護保険制度の無理解という点では、住宅改修費についても法令上の正式名称を知らない人がいる。それは居宅介護住宅改修費(介護予防住宅改修費)とされているのである・・・この部分については正式名称を知らないからと言って、あまり支障はないかもしれない。
だが自分の仕事に一番関連深い法律を、一度も通読したことがないというのも専門家として恥ずかしいことなので、一通り目を通して基本的な部分はしっかり頭に刻んでおくという姿勢は必要だと思う。
介護支援専門員という有資格者が、介護保険法に精通していて損なことは何もないのだから・・・。
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