今年度から特養(地域密着型含む)・老健・介護医療院の介護保険三施設は、協力医療機関指定が義務化された。(※3年間の経過措置期間有り)
このことについて今年3月に、「協力医療機関指定義務化と協力医療機関連携加算について」という記事を書いて、義務化の内容と指定医療機関を見つけることは案外容易だろうと解説しているので、そちらも参照してほしい。
今日はもう少し踏み込んで、なぜ協力医療機関は在宅療養支援病院等(※在宅療養支援病院や在宅療養支援診療所、地域包括ケア病棟(200床未満)を持つ医療機関、在宅療養後方支援病院等の、在宅医療を支援する地域の医療機関)に限定されているのかということを考えてみたい。
参照記事でも書いた通り、在宅療養支援病院等とはまさに在宅療養にむけた治療と支援を主とする訪問診療や訪問リハなどの居宅支援体制を整えた医療機関なのである。
そこは病状が回復するまでじっくりと治療して、病気が完治してから退院させる医療機関ではないのだ。
治療すべき病状となった人を入院させても、そこは急変時の対応や急性期治療を行うだけで、回復期の治療は入院前の居所で行うように、早期退院させるのである。
よって在宅療養支援病院等の入院期間は原則7日間、最長でも14日間とされている。
だからこそ協力医療機関指定義務化要件の一つには、「入所者が協力医療機関等に入院した後に、病状が軽快し退院が可能となった場合においては、速やかに再入所させることができるように努めることとする。」という規定が設けられているのだ。

これによって老健の対応も大きく変化する可能性がある・・・昨年度までの老健施設については、特養のように「医療機関への入院が3ヶ月以内であれば、退院後は円滑に特養へ入所できるようにしなければならない」というルールはなかった。その為、老健利用者が入院した場合、即退所となり、入院したその日に別の利用者を入所させて、入院退所した利用者の「その後」についての責任は持たなくてよかった。
しかし今年度からは協力医療機関指定義務化要件として、老健から協力医療機関に入院した利用者については、「その後」の責任も負わねばならなくなったのである。
このように在宅復帰施設としての機能を持つ老健は、その機能を果たせずに医療機関入院により支援を終えてしまうケースも多かったが、今後はそうしたケースも繰り返し老健入所させて、在宅復帰が実現するまで支援を継続するという対応が求められてくるのである。
また特養の場合は3月ルールがあるといっても、協力医療機関指定義務化によってそのルール自体が形骸化することになる。なぜなら今後の協力医療機関は、それほど長く患者を入院させてくれないからである。
特養で急変した人でも、入院して急変対応が終われば、治療継続の必要があっても7日〜14日以内に特養に再入所するのである。
当然ことながら、今まで医療機関で対応してきた医療・看護・機能訓練といったものも、特養で対応しなければならなくなる。
これに備えて、今年度から介護支援専門員の法定研修では、疾患別ケアで構成するケアマネジメントの実現を図るためのプログラムが盛り込まれているが、そこでは脳血管疾患・大腿骨頸部骨折・心疾患・認知症・誤嚥性肺炎の予防というケアマネジャーが取り扱う可能性が高い5つの疾患別に、想定される支援内容やアセスメント・モニタリングの視点をまとめている。
つまり特養等の福祉系サービスでも、それらの疾患を持つ方の回復期を含めた適切な対応が求められるわけである。ケアマネジャーのみならず、介護職員等もそれらの基礎疾病とはどのような病状を指し、どういう対応が求められるのかという知識を得ておかねばならない。
さらに特養の機能訓練体制も、脳血管疾患後遺症や大腿骨頸部骨折などの回復期にも対応できるように、看護職員が機能訓練指導員を兼務する体制ではなく、セラピストが機能訓練指導員として専従して個別機能訓練加算の算定ができる体制がより強く求められてくるだろう。
このように今後は、入院治療は本当に必要な人のみとされ、医療から介護への付け替えを進める社会構造に変わっていく。そのため療養の場は暮らしの場へと移っていき、療養の場で暮らしを支援することが求められていく。
それは介護サービスに医療が深く食い込んでくることにもつながり介護・医療連携が必然となるという意味でもある。
介護関係者はそのことを理解して、積極的に医療機関関係者とのネットワークづくりに加わっていく必要があるだろう。
なお今回は介護保険施設のみが指定医療機関義務化となったが、(地域密着型)特定施設入居者生活介護・認知症対応型共同生活介護も同じように協力医療機関との連携体制を構築する努力義務規定が設けられている。
これは早ければ次の報酬改定時の基準改正において、特定施設やGHといった居住系サービスにも、協力医療機関指定が義務が課せられる可能性が高いという意味なので、関係者はそれに備える心構えを持っておいてほしい。
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