介護事業者の多くが人材確保に苦しんでいる・・・いや人材確保ではなく人員確保が困難となっている事業者が少なくない。

利用待機者がたくさんいるにもかかわらず、従業員の数が足りないため一部のベッドを休止せざるを得ない介護保険施設も見受けられる。

それらの施設管理職の皆さんは、いかに人員を確保するかということに毎日頭を悩ませ、とにもかくにも従業員募集に応募があることを祈ってる状態の人が多い・・・だがハローワークに募集を出しても、応募してくる人はほとんどいない。

だからと言って、それで人員確保をあきらめるわけにもいかず、あれやこれやと様々な工夫も行なっていると思う。

その中にはユニークで効果がある方法が存在する一方で、それで人員を増やしたとしても、サービス現場の業務が回ることにはつながらないだろうと思われる愚策も存在する。

例えば、働き手の希望する自由な時間で短時間パート勤務者を増やしているところも少なくないが、タイムマネジメントを伴わない人員配置によって、正規職員等の業務負担は減らず、逆に生産性は低下するという現象もみられている。
介護の生産性
短時間パート職員の希望する勤務時間というのは、基本的に家族の朝食や夕食づくりに支障がない日中勤務であることが多く、モーニングケアやナイトケアといった、忙しい時間に働きたいという希望者はさほど多くない。

そのため朝食介助や夕食介助時間を除いた、日中中心の勤務希望者が多い。

そういう希望者が増えて、配置人員が増えた場合、結果的に昼食介助を中心にした時間の短時間パート者が多くなる傾向がある。

そこでは昼ご飯の介助時だけは、介護職員が余るほどいるのに、朝と夕の一番忙しい時間帯はワンオペフロアが多くなるという現象が生ずる。

正規職員等のシフト勤務者は、短時間パート職が多い時間帯に休み時間をとれるといっても、その分、休み時間を終え自分が中心となって働く時間帯に配置職員が少ない状態とならざるを得ない。そうなると労務負担が増すため、自分だけが過重労働を強いられているとして不満がたまる傾向が強くなる。

そのような状態で介護職員の常勤換算数がいくら増えたとしても、職場環境は良くなったとは言えないし、介護実務はまったく回らないといってよく、シフト勤務者は疲弊の一途を辿り、パフォーマンスは低下するから、当然のことながら施設ケア全体の生産性は低下する。

しかし事実として配置人員数は増えているのだから、管理職や事務担当者は、現場の疲弊に気づきにくいし、気づいたとしても、それは過度の不満であるとか、贅沢な要求であるとして無視してしまう傾向に陥りやすい。

その結果、燃料が燃え尽きるように正規職員が退職し、さらに人員配置が困難となるという悪循環に陥る・・・そうなっては人員確保は永遠の課題となり、解決不可能な問題となってしまう。

そういう意味で、どの時間帯に短時間パートを貼り付けるのかというマネジメントをもっと重視した雇用計画の見直しが必要である。

そのためには現在働いているシフト勤務者等と十分なコミュニケーションを交わして、どの時間帯やどの曜日に、どのような形でパート職員を配置すべきかという数パターンのシュミレーションを行っておく必要がある。その中でベストの配置やベター配置のパターンを導き出して、よりそのパターンに近い雇用を目指すということについて、介護職員等とコンセンサスを得ておくことで、不平・不満の芽を摘み取ることにもつながっていく。

とのもかくにも頭数だけ増やそうとする人員対策は、労多くして功少なしと考えるべきである。


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