現代社会は、インターネットで検索すれば、ほとんどの情報が手に入る便利な社会である。
だからと言ってネット上の情報がすべて正しい情報とは限らない・・・そこには情報操作の意図をもって、わざと捻じ曲げた情報も置かれているし、そのような悪意がなくとも、勘違いや誤解・知識の欠如によって正確とは言えない情報も多々存在するからだ。
介護保険制度関連情報も同様である・・・例えば地域密着型サービスに関する誤解がネット情報で拡散されている。
インターネットの検索エンジンに、「地域密着型サービスとは」と入力して検索すると、たくさんのサイトがヒットして、それぞれで説明文が書かれているが、それを見ると「利用が希望する施設と同じ市町村に住民票のある方が利用できるサービス」と書かれて、例外規定が書かれていないサイトが目に付く。
例外とは、他の市町村が地域密着型サービスを指定するケースである。
例えば僕が住む登別市は、生活圏域としては隣の室蘭市と一体であるといってよく、僕が買い物に行ったり、呑みに出るのは室蘭市であることが多い。特に僕の家は、室蘭市との境界の川のすぐ近くにあるため、室蘭市には歩いて行くことができる。
そのような地域に住む登別市民にとっては、登別市に所在するGHより、室蘭市に所在するGHの方が近いというケースが出てくる。この場合仮に、室蘭市に所在するGHについて、登別市の被保険者からの利用希望に基づき、登別市が必要であると認める場合には、例外的に室蘭市の同意を得て指定することで、登別市民が利用することが可能となるのである。(※登別と室蘭間で、実際にそうしたケースがあるわけではない。あくまで可能性例を挙げただけである)
つまり地域密着サービスとは、原則的には利用が希望する施設と同じ市町村に住民票のある方が利用できるサービスではあるが、例外的に他の市町村が事業指定する場合があり、その場合は指定した他市の住民でも利用できるサービスであるということになるのだ・・・こうした例外規定を示さないサイトは、信頼のおけないサイトということになる。
また通所リハビリのサービス提供ルールも、訪問リハビリと混同されて伝えられているサイトが目に付く。
訪問リハビリは、指示書を発行する医師と、利用者の主治医師が異なる場合で、サービス利用前に指示書発行医師が利用者診療を行うことができない場合に、主治医師から診療情報提供書を発行してもらわねばならない。
そのことは通所リハビリの算定基準〔老企36号第2の5の(1)〕に以下のように書かれている。
・ 訪問リハビリテーションは、指示を行う医師の診療の日から3月以内に行われた場合に算定する。また、別の医療機関の医師から情報提供を受けて、訪問リハビリテーションを実施した場合には、情報提供を行った医療機関の医師による当該情報提供の基礎となる診療の日から3月以内に行われた場合に算定する。
しかし通所リハビリの場合、そのような算定基準は存在しない。つまり指示を出す通所リハの医師が、利用者の診療を行わねばならないというルールや、主治医師でない場合に診療情報提供書を発行してもらわねばならないというルールは存在しないのである。
これは両サービスの運営基準にも現れている。
指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成十一年厚生省令第三十七号)の訪問リハビリの基準・第八十一条では、『医師及び理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士は、当該医師の診療に基づき(中略)訪問リハビリテーション計画を作成しなければならない。」としている。
一方で通所リハビリの運営基準・第百十五条は、『医師及び理学療法士、作業療法士その他専ら指定通所リハビリテーションの提供に当たる通所リハビリテーション従業者(以下「医師等の従業者」という。)は、診療又は運動機能検査、作業能力検査等を基に〜(中略)通所リハビリテーション計画を作成しなければならない。」としており、医師の診療ではなく、運動機能検査、作業能力検査等を基に通所リハビリの提供・実施の指示ができるとしているのである。
つまり通所リハビリを利用するに際して、通所リハビリテーションを受けるにあたって、利用者が自分の主治医師に、通所リハの医師あてに診療情報提供書を発行するように依頼しなければならないということにはなっていないのである。
しかし多くのサイトで、通所リハの利用者もしくは通所リハ事業所に対して、主治医師に診療情報提供書を発行するように依頼する義務があるかのような文章が記載されている。
それは根拠のないデマと同じである。通所リハビリ利用に関連して、診療情報提供書が必要になるというルールは存在しないのである。
通所リハビリを利用するに際し、主治医師から診療情報提供書を発行してもらわねばならないと思い込んでいる関係者は、今一度報酬告示の算定基準と基準省令の運営基準を確認して、そんなルールはないことを理解してほしい。
※CBニュースの連載・masaが紐解く介護の今の最新記事が今朝9時にアップされました。
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