今日の午後は、オンラインによる120分の看取り介護講演を予定している。
この講演は、会津若松市在宅医療・介護連携支援センターが主催するもので、会津地域の医療・介護関係者に向けた研修として行われるものである。
先月第1回(120分)を終え、その続きの第2回:最終回として看取り介護の実践論を伝える予定になっている。
第1回は、本当に求められる看取り介護実践とはどういうものかというところから始めて、暮らしの場で看取り介護が求められる理由や、そのメリット、人生会議の在り方、看取り介護の開始から終了までの具体的手順など、看取り介護実践の基盤となる基礎知識を中心に伝えた。
今日の2回目は最終回でもあり、どのような状態の人を、どのように看取ってきたのかという事実・実践論を伝えたいと思う。そこで生まれた様々なエピソードは本物の実践者でしか伝えられないものであり、医療と介護の現業者には共感してもらえる部分が多々あるのではないかと思う。
先月行った第1回の受講者の方から、次のような感想と質問を頂いているので紹介したい。
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(特別養護老人ホームの看護職員さんからの感想と質問)
私は一般病棟、緩和ケア病棟の経験を経て、現在は特養での看取りに携わっています。
お恥ずかしい話ですが、私自身、一般病棟に勤めている時は『看取り』とは「死ぬ準備をするもの」「死に方を考えるもの」と捉えていました。
緩和ケア病棟を経験して初めて『看取り』とは「最期までその人らしく生きることを支えるもの」であることを知り、【死】ではなく【生きる】に焦点を当てることが重要であると学びました。
看取りの場面は、緩和ケア病棟に限らず、一般病棟でも介護施設でも多くあるはずなのに、適切な看取りケアの認識がなされていないのが現状と感じています。
多死社会と言われる現代、看取り介護が重要視されていますが、看取り介護を正しく理解するための機会が極めて少ないと感じていたので、今回の菊地先生の講義は大変貴重な機会となりました。ありがとうございました。
講義の中で、終末期判定、余命診断、看取りムンテラは、看取り介護の対象者と、この世で縁を結んだ方々との、最期のお別れに備えた双方の心の準備・エピソード作りをするために重要な意味があると話がありました。
本来はそうあるべきなのに、医療現場においても介護施設においても、終末期判定や看取りムンテラが医療関係者や介護関係者の保身のために行われていると感じることが多いです。「高齢者はいつ何が起こるか分からないから、80歳過ぎたらみんな看取りの同意取ればいいのに。」と言った見当違いな言葉を耳にすることが多くありました。
終末期判定や看取りムンテラは、急変時の意向確認とは全く別な意味合いがあるのに、混同してしまっている現状があります。このような認識の違いを目の当たりにする度に、「他職種が看取り介護を正しく理解し、共通認識するためにはどうしたら良いのだろう?」と考えてきました。
菊地先生が勤めていた特養では、他職種が正しく看取り介護を理解するために、どのような取り組みをされてきましたか?教えて頂けると幸いです。
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とても貴重な意見と感想を頂きありがたいと心から思う。
質問については今日の講演の中で回答するが、全従業員の看取り介護の理解を促すためには、その基盤となる研修は必須であるが、それだけでは理解は深まらない。何より重要なのは、研修をもとにした実践から得るものをその場かぎりにせず、次に生かしていくことだ。積み重ねた経験を言葉にすることが大事なのである。
そういう意味で僕や、僕が所属していた組織が一番重要な学びの場と認識していたものはデスカンファレンスの場である。
一つ一つの看取り介護の過程と結果を振り返り、組織として評価することが次の看取り介護実践に繋がっていった。その過程で私たちが看取り介護の場で何を求められ、どのようや役割があるのかを知ることができた。
詳しくは「逝った人からのメッセーズが送られてくるデスカンファレンス」を参照していただきたい。
このデスカンファレスは2015年の報酬改定時に、特養の看取り介護加算の算定要件とされているので、実施しているところは多いと思うが、単に算定要件をクリアするためのアリバイ作りの会議と化すことがないように、亡くなった方の天からのメッセージを受け取るために、遺族の声を含めて本音で看取り介護過程を評価する場にしていく必要がある。
デスカンファレンスは、反省・後悔するためだけのものではなく、施設で生活している方たちに、これから活かす・繋げるためのものであることを忘れてはならないのである。
※メディカルサポネットの連載〜菊地雅洋の波乱万丈!選ばれる介護経営〜の最新記事Vol.8の最新記事は、「介護職員の離職防止対策について」がテーマで、8/22更新アップされています。どうぞご参照ください。
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