今後、人材がさらに不足することが予測される介護事業において、現在より人手と時間をかけない方法で介護が完結することが求められている。

介護実践のエビデンスが求められる理由も、それが存在することによって、より効率的なケアを行うことができ、それによって生産性の向上が実現でき、人手と時間を削ることができると考えられているからである。

介護実践におけるエビデンス創り科学的根拠に基づく介護実践という流れを創造することが必要とされている。

つまり、こういうケアを行えば、こういう結果に結びつくということが分かれば、他の方法を試したり、結果に結びつかない実践法を行って無駄な時間を掛けることをしなくて済む・・・そう考えられているわけである。

果たしてそんな介護が本当に実現するのだろうか。

少なくともLIFE科学的介護情報システム)によって、それが実現するなんてことはないだろう。なぜならLIFEの現状を見ると、介護を行ったこともないシステムベンダーが指定したデータを全国の介護事業者から収集し、その平均値を介護事業者にフィードバックしているだけだからだ。

実際の介護サービスの場において、どのような感情と生活課題を持つ人に、介護職員等がどのように向かい合っているかという真の姿は、LIFEの収集データには存在しないのである。
介護は感情労働
このシステムが介護実践のエビデンスを創造できると真剣に信じている人は、人感情にない機械のように、スイッチを入れれば組み立てたシステム通りに動くものと勘違いしているのではないかと思う。

だからと言って、介護という職業のエビデンスを生み出す可能性が全くないとは言わない。

現に介護実践の場においては、「○○さんに対しては、そういう働きかけはかえって悪い結果をもたらすわ。」・「○○さんは、○○すれば頑張って自分で○○してくれるのよ。」なんていう会話が飛び交っている・・・それってある意味エビデンスと言えるのではないだろうか。

だがそれは個人レベルの感覚としてしか存在しておらず、他者に伝わらないものでしかない。

それは個人レベルに存在するだけに過ぎないか、あるいはそうした感覚を持つ人に指導を受けられる事業所単位で存在するにしか過ぎないものだ。

結果を予測しながら実践されるケアの方法論が、そこだけに留まってしまっているのである。

そうした個人レベルの感覚やコツといったものを、己の内部で何となくわかっている状態に終わらせず、他者に文字や言葉で伝え事ができたら、介護のエビデンスと言えるものが出てくるのだろうと思う。

僕の著作本は、それらの感覚を伝えて、万人がその感覚を受け取ってほしいと思って書いている。残念ながら力及ばず、そこからエビデンスが生まれているという事実はないが、今後も文字という形で介護実践の方法論を根拠に基づいて伝えていく努力だけは続けていきたいと思う。

どちらにしても介護実践のエビデンスを創造するためには、各事業者ごとに持つノウハウを言葉にし、文章化して、それを介護マニュアル等の基本文書に載せていく努力が必要だろうと思う。

メディカルサポネットの連載〜菊地雅洋の波乱万丈!選ばれる介護経営〜の最新記事Vol.8の最新記事は、「介護職員の離職防止対策について」がテーマで、8/22更新アップされています。どうぞご参照ください。
菊地雅洋の波乱万丈!選ばれる介護経営


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