ケアマネジメントに関連した様々なルールの押しつけが、報酬改定の度に強化されていることに憤りを感じているケアマネは少なくないだろう。

ケアプランチェックの導入・強化、他専門職の介入ルール等々・・・。

その背景にはケアマネジャーのスキル差が問題となり、その標準化を図るという意味があるのは理解できる。しかしまともなケアマネジャーまで、様々な縛りや制限をかけられて、不必要な業務を増やされていくのは困ったものだ。

それに見合った報酬が支払われるならそれも我慢できるが、職場環境を整えるのが先でケアマネ自身の待遇改善は後回しでよいとされるなかで(参照:待遇より職場環境改善が重要という国の屁理屈)、制限だけ増え続けることには納得できない・・・。

8/2に発出された、介護保険最新情報vol.1296は、『介護保険における福祉用具の選定の判断基準について』という内容で、居宅ケアマネは必ず確認しておかねばならないものだ。

しかしそこでも居宅ケアマネに新たなルールが押し付けられている。
権力の乱用
ここでは『福祉用具の選定の判断基準』が改められているが、新たに判断基準に加えられたのは「移動用リフト」「体位変換器」「介助用ベルト」など。

あらたな判断基準は福祉用具について個別に、「使用が想定しにくい状態像」「使用が想定しにくい要介護度」「留意点」が提示されている。

そしてケアマネに対しては、利用者の状態が「使用が想定しにくい状態像」や「使用が想定しにくい要介護度」である場合、サービス担当者会議などで「福祉用具に関わる様々な専門職から、専門的な見地からの意見を求め、その妥当性について検討し、自立支援に資する居宅サービス計画の作成・見直しを行うこと」を求めている。

通知に明記されているように、ここでいう「福祉用具に関わる専門職」とは、福祉用具専門相談員をはじめ医師、看護師、作業療法士、理学療法士、言語聴覚士、ヘルパーを指している。

だが日ごろ利用者に接し、その暮らしの隅々まで熟知しているケアマネ以上に利用者の状況を知る専門職はいないはずだ。そして前職の経験も長いケアマネは、福祉用具の専門知識も身に着けている。

そうしたケアマネ以上に、利用者にとって、どの福祉用具をどのように使用すべきかという判断が可能な専門職なんているのだろうか・・・大いに疑問だ。

今回の通知はざっくばらんに言えば、特定の福祉用具についてはケアマネの判断だけで利用させてはならないということだ。つまりはケアマネジメントは信頼できないので、他の専門家の意見も聴いて最終決定せよというルールに他ならない。

それはケアマネジメントとはいったい何なのか、ケアマネは何のためにケアマネジメントを行っているのかがわからなくなるルールともいえる。

さらにこれによって踏む手順が増えるのだから、ケアマネの業務負担は確実に重くなる・・・しかしそれに対する報酬評価は全く行われない。

昨今、対価という見返りがないケアマネのシャドーワークが問題となっているが、そもそもケアマネの本来業務を増やしているのに、それに対する対価を与えないことは、シャドーワークが増えるよりもさらに大きな問題ではないのか。

こんなふうに業務負担ばかり増やして、その対価を与えないという状態は、ケアマネの成り手をさらに減らす要因にもなると思う。

このことは大いに憂うとともに、居宅ケアマネ実務に携わっている人々は、大いに抗議の声を挙げてほしいと願うのである。

僕もその声を後押しして応援したい。


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