徳島県つるぎ町の居宅介護支援事業所が、7/31付で指定取り消し処分を受けた。

取り消しの主な理由は、委託した認定調査に不正があったということと運営基準違反の2点。

認定調査の不正については、この事業所のケアマネジャーが町から委託された認定調査で、自らが担当する利用者28人について、実際の要介護度よりも重くなるよう虚偽の報告をしたほか、訪問調査をせず把握している情報だけで調査票を記入するなどして、本来の区分よりも高い居宅介護支援費を受け取っていたとのこと。

運営基準違反については、認定調査不正の対象になった28人とは別の利用者延べ53人に対して、サービス担当者会議を開かなかったり、ケアプランを作成しなかったりするなどしていたにもかかわらず、介護報酬を減算せずに受領していたというもの。

この二つの理由を総合的に勘案して処分が下されたものと思え、不正内容からすれば指定取り消しもやむなしといったところか・・・。

ところで認定調査で不正を問われた点について、当該ケアマネは不正を認め、「(限度額が上がって)利用者が便利になるようにやった」などと不正動機を述べているそうだ。

一方で報道記事では、このケアマネは利用者から『良くしてくれる』などと高評価を受けていたという。

利用者に最大限のサービスを利用できるようにしたいという思いが仇になった側面もあるのだろうか・・・しかし要介護度が上がれば、利用者の自己負担金も高くなるサービスも少なくないのだから、要介護度を不正に重度誘導した一番の理由は、居宅介護支援事業所の利益を増やすためと云われても仕方がないだろう。

こうした認定調査の不正は珍しいとも報道されているが、もしかしたら発覚するのが稀だということにしか過ぎないのかもしれない。

なぜなら僕も過去に、自分の経営するショートステイやデイサービスの利用者の要介護度に首を傾げるケースに遭遇した経験があるからだ。明らかに予防給付と思える状態像の人が、要介護2以上だったりするケースだ。もしかしたら予防給付になって、自分の担当を外れてしまわないように、鉛筆をなめて調査するケアマネが居たのかもしれない。
たそがれ
こうした不正調査をなくすためには、自分の担当者の認定調査をできないようなルールにするしかないが、現行では法令上の規制は存在しない。

その為、指定取り消し処分を行った徳島県つるぎ町の担当者は、「小さな町なので、認定調査をする職員も少ないため、業務を委託せざるを得ない。今後は、担当していない別のケアマネジャーに調査を行ってもらうなど、不正につながることがないようなやり方に修正していきたい」としている。

だがそうなると施設サービス利用者はどうするのかという問題にもつながってくる。多くのケースでは、施設利用者の認定調査は入所施設に委託して、施設利用者の担当ケアマネが調査代行しているという実態がある。

居宅サービス利用者のみ、担当ケアマネ以外の調査員委託を進めるのは、施設サービス利用者の調査と比較して、公平性という意味で整合性が取れなくなる。

だからと言って施設サービスも、担当ケアマネ以外の外部のケアマネジャーに調査委託をするとなると、受けてくれるケアマネジャーを確保するのにも大変な状況となる。

忙しい施設ケアマネは、他の施設にまで行って、日ごろの状況を知らない他施設利用者の調査に時間を削られるのを嫌うだろうし、だからと言ってただでさえ人材が少なくなってる居宅ケアマネは、そんな暇はないといったところだろう。

その為、担当ケアマネ以外への認定調査委託というのは、決して低いハードルとは言えないのである。

ではどうすればよいのだろう・・・そもそも認定調査基準は全国一律の基準・統一された物差しであって、誰もがどこで認定を受けても公平に要介護状態区分が認定されて、それが即ちサービスを公平に利用できるという意味だ。

認定調査員が勝手にこの基準をゆがめることは、単なる不正にとどまらず、無差別公平という大義名分を犯すことになるという自覚をもって、対人援助のプロとしての誇りを胸に、その精神を護るしかないと思う。

それができない人は、ケアマネジャーをはじめとした対人援助のプロとしてあるまじき存在というしかない。


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