理事長が法人財産を不正流用して解任された川崎市の社会福祉法人。
当該理事長は特養の会計から明らかになっているだけで8億5千万円を横領したことがわかっているそうだから、かなり悪質である。(※実際には10億円以上の横領があったと云われている)
このような巨額の不正が10年以上にもわたって見逃されていた理由は、理事長の父親が川崎市の元助役であり、その関係で連れてこられた理事・評議員が役員となっており、なおかつそれらの役員がかなり高齢で馴れ合いの関係となってしまい、理事会・評議委員会・監事(会計監査人)の監視機能が全く働かなかったことによるとされている。
この事件を取り上げて、社会福祉法人の不正等を特集報道として放映されたものがユーチューブにアップされている。
映像を見た通り、冒頭からこの特養の施設長が報道記者を連れ施設内を案内している。その際には、事件に触れる前に入所者の希望を叶えるためにパチンコ台を設置したエピソードを披露したりしている・・・。
それは良いとして、次にはほとんど使われていなかったという理事長室を案内しながら、理事長の不正の悪質な内容を糾弾する意見を述べ、『職員だけではなく、利用者や家族も裏切った。社会も裏切った』と語っている。
その気持ちはわかるし、言っていることは正論だ・・・間違った意見ではないだろう。
しかしである・・・解任理事長の不正を批判する施設長自身に責任はないのだろうか?
理事長の不正内容や横領金額は、新理事長が精算書に記載された内容から読み取れると言っている。つまりこの法人の財務諸表をきちんと読み取っておれば、十数年間の横領など見逃されるはずはないのである。
特養の施設長という立場の人は、自分が指揮命令している特養の財務状況を把握せずに経営(※運営ではなく経営である)に携わっているなんてことはあり得ない。施設長の責任として、すべての財務諸表に目を通し、収入状況は目標に達しているか、無駄な支出はないかなどをチェックする役割も持っているのだ。
そもそも財務諸表になる前の帳簿段階の数字を施設長は毎月チェックして、収支状況を把握しておかないと経営責任を果たしているとは言えない。
そういう立場の人が、自分が施設経営に関わっている時期に、不正な支出が複数年に渡って行われていたということを把握できなかったとしたら、施設長としての能力が疑われる。
財務諸表を読む立場にない施設長なんてあり得ないからだ。
そう考えると、施設長として自分が経営に携わっていた時期に、理事長が長年にわたり特養の収益を不正流用していたことを知らずに、批判している姿は違和感しか覚えない。
それともインタビューに答えている施設長とは、前理事長が解任後に施設長に就任したのだろうか・・・そうであっても前職はこの施設の管理職以上の立場であったはずである。であれば経営会議に参加して収支状況の把握は施設長と同様に行っていなければ、法人の経営システム自体が問題ということになる。
職員が不正を働いた理事長を糾弾するならともかく、施設長という立場の人間は、こうした取材に対して、自分に全く責任がないかのように対応するのはいかがなものだろうかと思う。
僕にとっては、その姿は理解不可能である。
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