今年度から介護保険施設に課せられた協力医療機関指定義務化によって、介護保険施設が連携しなければならない医療機関は、在宅療養支援病院や在宅療養支援診療所、地域包括ケア病棟(200 床未満)を持つ医療機関、在宅療養後方支援病院等の在宅医療を支援する地域の医療機関(以下、在宅療養支援病院等)とされている。
この基準改正が明らかになった際に、連携先が在宅療養支援病院等とされたことに戸惑った関係者も少なくなかった。
経過措置期間があるとはいえ、そのような指定医療機関を探すことができるのかという戸惑いである・・・同時に昨年度まで協力医療機関として連携していた医療機関が在宅療養支援病院等ではない場合、かねてからの関係性を無視して(義理を欠いて)連携先から外さねばならないという戸惑いもあった。
しかし今現在は、それは杞憂に終わったいう関係者も多いのではないだろうか。
なぜなら在宅療養支援病院等の指定を受けている医療機関は意外と多いからである。今回の基準改正をきっかけに、従前からの協力医療機関が知らぬ間にその指定を受けていたことに気づいたという関係者も少なくない。
例えば僕がかつて総合施設長を務めていた社福法人の母体は、ベッド数が550床の精神科医療機関である。当然そこが特養の協力病院となっていたわけであるが、その病棟の一部が地域包括ケア病棟(200 床未満)の指定を受けている。よってその特養は新たに協力医療機関を探す必要はない。
その他にも、かつて医療保険の療養型施設とされていた医療機関・老人病院と言われた長期療養型医療機関が、軒並み在宅療養支援病院の指定を受けている。そうしないと経営が難しくなるからだ。
これらの医療機関は地域包括ケアシステムの一翼を担う役割があり、原則入院期間は7日間(最大でも14日間)とされ、長期入院は想定していない医療機関である。
つまり入院治療は本当に必要な人のみとするというのが国の方針であり、医療から介護への付け替えを進めているのである。その結果、療養の場は暮らしの場へ付け替えられていくのである。
よって介護サービスに医療が深く食い込んでくることも必然であり、介護・医療連携が必然となる。
だからこそ今年度の法定研修では脳血管疾患・大腿骨頸部骨折・心疾患・認知症・誤嚥性肺炎の予防などの疾患別マネジメントが求められており、当然その流れは介護サービスにおいて疾患別ケアが求められることに繋がる。
その時に介護職員は適切に対応できるだろうか・・・適切に対応するための疾患に対する正しい基礎知識を持っているだろうか。
例えば持病に糖尿病を持つ人は血糖値管理が不可欠であるが、そのことを理解しているだろうか。そしてその理由がわかっているだろうか・・・。
糖尿病とは、インスリンが十分に働かないために血糖値(血液中に含まれるブドウ糖)が慢性的に高くなる病気のことだ。
血糖値が何年間も高いままで放置されると、血管が傷つき、将来的に心臓病や、失明、腎不全、足の切断といった、より重い病気(糖尿病の慢性合併症)につながる。また、著しく高い血糖は、それだけで昏睡(こんすい)などをおこすことがある。
つまり血糖値管理は、様々な合併症を防ぐために不可欠なのだ。
しかも血管が傷つく結果、手足の抹消が壊死して切断を余儀なくされるケースは、切断後も壊死が進行して切断範囲を広げねばならないケースさえある。この場合壊死した部分は体が腐ってくる状態で、激しい痛みにのたうち回る結果となる・・・末期がんの痛みは完全にコントロール可能となっているが、体の抹消から腐ってくる痛みを完全にコントロールすることは非常に困難である。
つまり糖尿病から合併症を起こして、それが原因で死に至るケースほど、痛みで苦しむ死に方はないともいえるわけである。
だからこそ血糖値管理は必須で、そのための食事制限も不可欠になる。
介護サービスの場では、介護職員が食事制限されている利用者を気の毒に思い、他の人のようにおやつが食べられないからかわいそうと思って、食事制限を守らないことに目こぼしするようなケースが見られる・・・それを優しさだと誤解している人もいる。
しかしその結果、どのような状態になるかを理解しているのだろうか。
身体が腐る結果を理解しているとしたら、そのような目こぼしは善意でも親切でもない・・・それは天使の顔を借りた、悪魔の行為であることが理解できるようにしなければならない。
地域包括ケアシステムが深化する社会においては、その程度の医学知識を、すべての介護職員に与えておく必要があるのだ。
その為の教育が必須なのである。
※8月15日にオンライン配信した、「身体拘束廃止マネジメント〜2024年改定対応」ですが、下記からアーカイブ配信動画を視聴できます。興味がある方は下記YouTubeを参照願いします。
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