特養は個室化が進んでいる。それはプライバシーに配慮した暮らしの場を提供するという意味で、歓迎すべきことである。

一方で特養は入所要件が厳格化され、原則要介護3以上の人が対象になっているため、重度化も進行している。

要介護2以下の人が入所できる特例入所を利用する人も認知症の人が多いため、見守りや声掛けが常に必要な人も増えている。

それらの方が個室で安全に暮らすことができるためのアイテムの一つとして、個室内を写すカメラを設置する施設も増えている。

しかし居室内をモニターすることは、一方で利用者のプライバシーを侵害する恐れにもつながりかねない。よって居室内モニターについては、賛否両論が存在することも事実だ。
見守りモニター
そうした問題に十分配慮しながら、自らナースコールを押すことができない認知症の人などを見守るカメラと、AIを搭載してバイタルチャックが自動でできるモニターを連動設置する施設も増えている・・・何事も使い方が重要なので、利用者のプライバシーを侵害しないように、かつ安全な暮らしを送ることができるように、最善の方法をとっていただきたい。

忘れてはならないことは、テクノロジーの使用目的はあくまで、利用者の暮らしの質向上にあるということだ。利用者の暮らしを無視した、業務省力化のためのテクノロジー導入になっては困るわけである。

ところで、こうしたモニター設置には、私たちが想定した効用以外の別の効用があるのかなと思える事件があった。

東京都江東区東砂の介護老人福祉施設(特養)で、入居者の90代女性を殴った暴行の疑いで、江東区の介護士・金城弘明容疑者(38)が7/24に逮捕された。

逮捕容疑は7/3朝、勤務先の特養個室で、容疑者が女性の顔を複数回殴ったとされる。

容疑者は、「女性がトイレを済ませたのにベッドに戻らずイライラした」と話し、「腕を強くつかみ力ずくでベッドに寝かせたが、殴っていない」と容疑を否認しているという。

しかし逮捕のきかっけは、施設職員が女性の顔や体のあざに気づき、個室のカメラ映像を確認して発覚したという経緯である。

動かぬ証拠のカメラ映像がある限り、容疑者の否認は通らないだろう。

逆に言えば、カメラ映像がなければ、言い逃れができるかもしれないということで、カメラ設置の効用として、こうした暴行を防いだり、不適切行為を暴く証拠となったりすることも考えるべきなのだろか・・・。
※そのような必要性があること自体、恥ずべきことであるが

しかし月単位どころか週単位で、日本のどこかの介護事業者内で虐待事件が起きたと報道される昨今の状況である。今年度の介護報酬改定で、虐待防止措置未実施減算が新設されなければならなかったという状況もある(参照:虐待防止措置未実施減算が新設されたという恥

さすれば今後、特養をはじめとした介護施設は、空きベットを埋めるために地域住民の方々に対し、「私共の施設は、個室内で安全に過ごせるように見守り、かつ従業員が不適切な行為に及ぶことがないように、常に従業員の行動を監視するカメラを設置しています。」とでもアピールすべきなんだろうか・・・。

それはとても恥ずべき状態だと思うのは、僕だけなんだろうか・・・。
メディカルサポネットの連載、菊地雅洋の波乱万丈!選ばれる介護経営の7/25更新記事は、介護事業経営を左右する加算算定の考え方です。
菊地雅洋の波乱万丈!選ばれる介護経営
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