介護事業経営者や管理職の中には、改定介護報酬の構造(加算算定要件等も含む)について、幹部や事務担当者等の一部の従業員だけがその内容に精通しておればよいと考えている人が居られる。
そうした考えに基づいて、介護職員には報酬改定内容について何も知らせておらず、新設加算の算定要件などを理解できる介護職員がほとんど存在しない介護事業者も存在する・・・そしてそうした事業者の経営者や管理職は、その状態がまずいとは全く考えていなかったりする。
僕はその考え方は間違っていると思う。
加算算定要件等の報酬構造は、わかりづらくとも、できるだけ全従業員に伝えて理解をするように促すべきだと思う。それが職場環境を整えることに繋がると考えている。

僕は社福の総合施設長を務めていた時期が長かったが、報酬改定ごとにきちんと従業員に説明会を開き、全職員が新たな報酬構造を理解するように努めてきた。
それには主に二つの意味がある。一つには、報酬改定の内容を理解することにより、国が介護事業者に何を求めているかを全従業員が理解することができるということだ。
例えば国は自立支援については、栄養状態の維持向上・口腔機能の維持向上・機能訓練の三位一体の実施によって効果が高まるとして対策している。
そして人材対策については、必要な介護人材を確保することが困難になったとして、介護分野でもテクノロジーが人に代わることができる分野には、それらを積極的に導入し、生産性を高めることで人材難を乗り切ろうという方向に舵を切っている。
介護職員や看護職員が、そうした国の考え方を知り、その中で自分たちに何が求められているかを知ることは、働き方を改善するなどの改革が求められることを理解するうえで必要不可欠である。
そのこととも関連するが、二つ目の意味とは、仕事の意味を知り、モチベーションを低下させないということだ。
介護報酬改定の度に、看護職・介護職・相談援助職には新たな業務が必要とされてくる。
今年度の改定においては、新設加算の要件として新たな委員会の設置や、そうした委員会・会議・研修への参加義務がこれでもかというほど多く設けられた。(参照:会議のためにケアができない)
当然、それに伴う記録類の整備も新たに設けられることとなる。
すると多くの従業員が、今までの仕事のやり方を変えなければならなくなる。看護・介護職員は、利用者に接して対応する時間を削って、会議等の間接業務に携わる時間が増えることになるが、そのことに疑問を感ずる従業員は少なくない・・・利用者のケアを優先しないで、話し合いや記録に業務時間が削られることがあってよいのかという疑問である。
それはある意味、当然の疑問であり、本来そうであってはならないのかもしれない。しかしそうした新要件をクリアしないと、しかし事業経営に支障をきたすことになりかねない。
だからこそ加算算定要件等を含めて改定報酬の構造がどのようになっているのかを全従業員に説明し、そうしなければならないと納得したうえで仕事に就けるようにしなければならない。
そうしないで、自分が就業中に求められている働き方に疑問を持ったまま、そうした業務を続けていると、絞都に対するモチベーションは低下し、精神は疲弊し、バーンアウトにつながりかねない。
そもそもモチベーションは英語で「motivation」と表記し「motive(動機や目的)」と「action(行動や働き)」から成り立っている。つまり直訳すると「目的に向かう行動」ということになる。それは目標の達成や成果など、満足する結果を得るための「動機づけ」や「目的意識」とも言い換えることができる。
介護報酬構造を説明しないと、求められ行っている業務を行うという「動機づけ」や「目的意識」は生まれないのである。
逆に言えば、きちんとそのことを説明している介護事業者では、モチベーションが高い従業員が増える可能性が高まるのである。そうなると全体の業務効率化が進み、困難を乗り越える意欲も高まるため、組織全体の生産性向上にもつながっていくのだ。
こう考えると、全従業員にきちんと報酬改定内容を説明する機会を持たないという選択肢はないと僕は思う・・・そうした機会をつくっていない介護事業者は、今からでも遅くはないので、説明会を開催してほしいと思う。
講師が必要な際は、是非僕にもお声がけいただきたい。わかりやすく報酬構造を説明します。
※メディカルサポネットの連載、「菊地雅洋の波乱万丈!選ばれる介護経営」の7/25更新記事は、「介護事業経営を左右する加算算定の考え方」です。


文字リンクをクリックしてご覧ください。
※別ブログ「masaの血と骨と肉」もあります。お暇なときに覗きに来て下さい。
北海道介護福祉道場あかい花から介護・福祉情報掲示板(表板)に入ってください。
・「介護の誇り」は、こちらから送料無料で購入できます。
・masaの看取り介護指南本「看取りを支える介護実践〜命と向き合う現場から」(2019年1/20刊行)はこちらから送料無料で購入できます。

新刊「きみの介護に根拠はあるか〜本物の科学的介護とは」(2021年10月10日発売)をAmazonから取り寄せる方は、こちらをクリックしてください。