5年前に書いた、「絶滅危惧職種の懸念で基盤が揺らぐ地域包括ケアシステム」の中で、訪問介護員の高齢化が進み、後進が育っていない現状を見て、その職種は絶滅危惧種であると指摘した。

しかし訪問介護員だけではなく、介護支援専門員も同じような懸念が生じている。

介護労働安定センターが今月10日に公表した最新の「介護労働実態調査」によると、昨年度の介護支援専門員の平均年齢は53.6歳となっている。

この年齢は、介護職員やホームヘルパー・生活相談員といった主な職種の中で最も高い・・・。下記に介護支援専門員の年齢構成を図表化してみたのでご覧になっていただきたい。
介護支援専門員の年齢構成2023年度
これをみてわかる通り60歳以上が29.4%となって、全体の3割に迫っている。年金受給年齢に達している65歳以上の占める割合も13.6%である。

僕は介護支援専門員対象の研修講師として招待を受ける機会も多く、受講者の方と懇親の場で交流する機会も多い。そこで最近よく感じることは、自分より先輩の介護支援専門員の方が少なくないということだ。

今回の調査結果は、僕の実感を証明する結果になっているが、このまま介護支援専門員の高齢化が進むと困ったことになる。

年をとっても専門職として元気に働き続けられることは良いことではあるが、それにも自ずと限界が来るからだ。今3割に迫ろうとしている60歳以上の介護支援専門員の方の多くは、今後10年以内に引退の時期を迎えるだろう。

ところが40歳未満の介護支援専門員は7.6%でしかなく、しかも前年度から0.1ポイント低下しているのだ。これではどんどん現役として働く介護支援専門員が減少して、担当ケアマネが見つからない介護難民を生んでしまう。

このような介護支援専門員の高齢化の理由はいくつかあるが、大学で4年間社会福祉の勉強をし、社会福祉士という国家資格を得た人でも、その後5年間の実務を経ないと介護支援専門員の国家試験を受けられないというバリアが一番の問題である。

社会福祉士の資格が必要である専門職を5年も務めれば、それは大きなキャリアであり、その場所でそれなりの責任や地位を得ているはずだ。

そのような人が、改めて介護支援専門員の国家資格を得て、新たな仕事にチャレンジする気になるかと考えると、その可能性は低くて当然だろうという結論になる。

だからこそこの実務経験要件を見直す必要がある。それも思い切った見直しが必要が。

こうした議論をすると、「5年は長すぎるが、実務経験なしで受験資格を得られるのはあまりにも乱暴だ」として、実務経験を2年とか3年にしたらどうかという意見が多いが、それでは中途半端だ。

実務が5年から3年もしくは2年になったからと言って、同じように介護支援専門員とは異なる職種でキャリアを積めば、そこから新たな職種による仕事に替わろうという動機づけは生まれにくくなる。

そもそも大学を卒業したばかりの若者が、堂々と社会福祉士として様々な分野で活躍している事実を見れば、実務経験が社会福祉援助の専門家に必ずしも必要ではないことは証明されていると言える。

社会福祉士というのは、介護支援専門員より幅広い分野の国家試験を受けて合格した、ソーシャルワークの専門職だ。ケアマネジメントはソーシャルワークの一部にしか過ぎない。

つまり資格としては社会福祉士は、介護支援専門員の上位資格である。その上位資格者が、経験なしで専門職として働いているのに、介護支援専門員はそれはまかりならんという論理・論法の方がおかしいのである。

このことはこのブログ記事の中で何度も指摘している。(参照:ケアマネジメントの課題を論じているのは硬直化した脳

実務経験が仕事をしてくれるわけではないのだから、発想を根本から変えて、実務経験なしで介護支援専門員として活躍出来る新たな道筋を創るという考え方をしてもらいたいものである。

同時に、介護支援専門員になりたいという動機づけを高めるための待遇改善は不可欠だ。

ところが国はそれに対し、「厚労省は処遇改善さえすればいいとは決して思っていない。職場の環境改善、これこそが重要だと思っている」という考え方が示されている。

そんなこと言っておれば、いずれ介護支援専門員の成り手はなくなるぞという指摘については、明日改めてブログ記事にしようと思う。

今日は長くなったので、このあたりでいったん締めておく・・・明日の更新記事にも期待してほしい。
メディカルサポネットの連載、菊地雅洋の波乱万丈!選ばれる介護経営の今月更新記事は、科学的介護情報システム(LIFE)の現状と課題です。
菊地雅洋の波乱万丈!選ばれる介護経営
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