高齢者介護サービスの顧客の中心層が団塊の世代の方々となってきています。

それらの方々は、日本の高度経済成長期に現役世代としてたくさんの物づくりを行い、作ったものを売ってきた人たちが多いのです。景気が良い時代にサービス業に従事していた人も数多くおられます。

その方々は、できるだけ多くの顧客を確保するためのノウハウを身に着け、そのノウハウを後進に伝えてきた人達でもあります。いわゆるホスピタリティ精神おもてなしの心をもって接客するという教育を後輩にしてきた世代なのです。

そうした世代の人たちは、自分がサービスを受けるときも、もてなされて当然と考える傾向が強いのです・・・ところがそのような人たちが介護サービスを利用する身になって驚くことがあります。

それはホスピタリティ精神の欠片もない介護サービス従事者の姿です。その中には顧客に対して対等な口調タメ口で接する輩も少なくなく、顧客対応としてあり得ないと驚くのです。

そんなふうに驚くだけなら良いのですが、その中には失礼な対応に終始する介護従事者にショックを受け、機械的流れ作業の中で乱暴に介護される自分の境遇に嘆き悲しむ人がいます・・・そしてその嘆きのままに生を終え、旅立ってしまう人がいるのです。

横柄な態度・無礼な言葉遣いは、しばしば人の心を殺します。高齢者の方々にそのような事態が起こった場合は、心が殺されたまま肉体死に繋がってしまうことも少なくないのです。

そのとき、「そんなつもりはなかった」という言葉を発しても、それはなんの意味もありません。言い訳にもならないし、免罪符にもならないのです。

そのような事態に陥らないように、日ごろから誠意をもって介護サービスを利用する方々に丁寧に対応するための基盤となるのが、「サービスマナー」です。

接客はマニュアル化できても、ホスピタリティのあるサービスはマニュアル化できないのです。なぜならホスピタリティ精神とは、サービス提供者一人一人の気持ちの中に湧きあがってくる感情が根になるものだからです。感情はマニュアルでどうこうできるものではないのです。
ホスピタリティ
お客様に対しておもてなしをしたいという感情を湧き上がらせるものとは何でしょう。それはサービスマナーに徹した仕事ぶりに、お客様が満足してくれているという結果によってもたらされるのです。

つまりホスピタリティ精神とは、日ごろのサービスマナー意識からしか生まれないものなのです。

でもお客様に対するサービスマナーを忘れず、それに徹したサービスを行うことは、技術的には決して難しいことではありません。

むしろこれほど実践するのが簡単なことはないとも言えます。なぜならマナーをもって利用者に接するのには特別な知識や技術がいらないからです。そこで必要とされるのはごく常識的な顧客対応なのです。

そもそもお客様に対して、タメ口をはじめとして失礼な言葉遣いをしないというのは、学卒の新人職員であっても、特別にそのことを教えなくとも理解されていることです。

介護や医療以外のサービスではそれは常識でしかありません・・・介護や医療サービスの中で、お客様であり、なおかつ年齢も自分より上の人々にタメ口対応するという状態こそがいかれているのです。

そしてサービスマナーのある顧客対応が実践できないのは、その必要性を理解せず、やろうとしないからです。

だからこそサービスマナーの基本を教える方法論を見直さねばなりません。

サービスマナー研修とは、お辞儀の仕方とか、電話の応対を教えるのではなく、マナーをもって介護サービス利用者に接する必要性を理解させることが第一なのです。いかに介護の常識が世間の常識とずれているのかを理解させるところから始めなければならないのです。

タメ口対応がなぜお客様に対して失礼なのかを教えてくれるマナー講師はいません・・・それはあまりに常識過ぎるから、介護と医療以外の職業に就いている人にそんな講義をしたら、当たり前だろうと馬鹿にされます。

しかし介護と医療の職業に就いている人には、それが必要なのです。そしてマナー意識のない対応が、家庭的な対応ではないことを伝えなければなりません。さらにマナーのない対応を放置した末路ケースをたくさん事実として伝える必要があります。

このように介護の実務に即生かすことができ、やる気にさえなれば実践できる方法論を講義ができるマナー講師はそう多くはありません。僕はその一人であると自負しています。

そこで必ず伝えていることがあります。それは・・・どうぞよそよそしさを恐れるより、無礼で馴れ馴れしい対応で、利用者の尊厳や誇りを奪い、心を殺してしまうことを恐れる人でいてくださいということです。

どうぞあなたもそのような人になってほしいと思います。


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