今日のこのブログタイトルを見て、見慣れない・聴き慣れない言葉が書かれていると思った方も少なくないのではないだろうか。
タスク・シフト/シェアとは、一定の業務を他者に移管する、あるいは共同実施することであり、医療職と介護職のタスク・シフト/シェアとは、医師や看護職員にしか行えなかった業務の一部を介護職員に分担する仕組みを指す。
こうした議論が政府の、「規制改革推進会議」で行われていたが、今年度の答申が5/31、岸田文雄首相へ提出された。
そこで注目したいのが文字リンクを貼りつけた答申の62頁〜64頁である。
そこでは、「急速な高齢者人口の増加に伴い、ケアを必要とする利用者も含め、利用者が増加する一方、医療・介護人材の不足・偏在に現場が直面しており、現場の問題解決・課題解決のために必要な制度整備を行うのみならず、実際に現場の問題解決・課題解決がなされることが喫緊の課題である。」としたうえで、、医療職・介護職間のタスク・シフト/シェアを更に推進し、安全性を確保しつつ利用者本位のサービスを実現するための措置として、「医行為ではないと考えられる範囲を更に整理する。」としている。
さらに介護職員の行うことができない医行為について、以下のような改革案が示されている。
『介護現場で実施されることが多いと考えられる行為のうち医行為に該当すると考えられるものであっても、例えば、介護職員が利用者本人との介護サービス契約や利用者同意を前提に当該行為を実施するとともに、目的の正当性、手段の相当性、必要性・緊急性等が認められる場合には実質的違法性阻却が認められる可能性があるのではないかとの指摘を踏まえ、一定の要件の下、介護職員が実施可能と考えられる行為の明確化についてその可否を含めて検討し、結論を得る。
その上で、厚生労働省は、介護職員が実施可能とする行為があるとの結論を得た場合には、一定の要件の下、介護職員が実施可能とする行為の実現のために必要な法令及び研修体系等について検討し、結論を得次第、速やかに必要な措置を講ずる。』
違法性阻却とは、『 ある行為が、外形的には犯罪や不法行為になるように見えても、法律上その行為を正当とする理由があるため、違法性がなくなり、犯罪や不法行為とならないこと。正当防衛や医師の手術行為などに適用。(デジタル大辞泉 より引用)』であり、行って構わないという意味になる。
喀痰吸引や経管栄養(胃ろう・腸ろうなど)については、介護職員が研修等を受講して、「認定特定行為業務従事者」となること等で可能な行為になるわけであるが、それはあまりに狭い範囲の行為である。(※ちなみに喀痰吸引などが認定特定行為とされる以前は、一定の研修を受けた介護職員がこれらの行為を、違法性阻却として実施することが認められていた)
超高齢社会が進行する現代社会では、医療器具をつけたり、毎日何らかの医行為を必要とする人が増え続けている。その為、そうした行為に対応する人材を増やしていくことが社会全体のニーズであるが、認定特定行為という形でしか対応が許されていないことが、時代のニーズに合致していないともいえるわけである。
特に問題となっているのがインスリン注射である。
在宅生活を送る人の中には、自分で注射ができない認知症の人も居られる。高齢者夫婦世帯で夫がそうした状態となっている人に対し、手の震えがある高齢の妻がインスリン注射をしているケースもある。ところがその夫がいざ特養に入所しようとしたときに、家族ではない介護職員にはインスリン注射を行うことは許されていないとして、看護職員が対応できない施設に入所を拒まれるというケースがある。
妻からしてみれば、手の震えがある自分が行っている行為を、なぜ介護の専門職ができないのかと憤りをぬぐえないのも当然と言えるのではないだろうか。
それは行き場のない介護難民を生む元凶ともいえる問題である。それらを解決するために、今回の答申は意味があるし、その実現に向けてスピード感をもって取り組んでほしいと思う。
そういう意味では、違法性阻却であろうと、利用者との契約や同意など一定の条件のもとであろうと、どのような形でも良いから、インスリン注射を介護職員が行ってよいとする改革を急いでほしい。
インスリンが注射ではなく、経口摂取できるならば問題ないのだろうが、近い将来そうなる見込みもないのだから、早急に改革してほしいと切に願うものである。
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