2023年度介護報酬改定の基本視点の一つ「地域包括ケアシステムの深化・推進」の具体策の中には、「看取りへの対応強化」が掲げられている。

だが特養の看取り介護加算は従前からのままで、算定要件等の変更は行われていない。

そのかわり短期入所生活介護について、看取り期の利用者に対するサービス提供体制の強化を図る観点から、レスパイト機能を果たしつつ、看護職員の体制確保や対応方針を定め、看取り期の利用者に対してサービス提供を行った場合に看取り連携体制加算64単位/日が新設されている。(※死亡日及び死亡日以前30日以下について、7日を限度

その他、訪問入浴介護における看取り対応体制の評価として加算が新設されたり、訪問看護等におけるターミナルケア加算の単位が上げられたり、居宅介護支援におけるターミナルケアマネジメント加算を算定できる範囲を、がん末期に限定せず全ての終末期支援に拡大したりしている。

つまり今年度の看取り介護の対応強化の中心は、在宅における看取り介護支援が主たるテーマになっているのだ。
在宅での看取り対応強化
それは在宅における老衰死が増えていることと関連している。老衰で枯れ行くように死を迎えるに際して、治療的な医療は必要とされず、死ぬためだけに医療機関に入院するケースが減っているのだ。

それだけではなく、医療機関入院中に回復不能な終末期という診断を受けた人が、残された時間を自宅で過ごし、最期の瞬間を自宅で迎えたいとして退院するケースも増えている。

居宅ケアマネをはじめとした関係者が、こうした希望を持つ方の家族から、退院と退院後の支援を受けたいと相談を受ける機会も多くなっている。

このように、退院して自宅介護を受ける人・その人を支えるために自宅で看取り介護をしようという家族が増えている。

しかしいざ看取り介護を行ってみると、思った以上に負担が重たいと感ずる人も少なくない・・・何しろ多くの家族にとって、終末期の家族を支援するということは初めての経験であることが多く、予測不能なことが多々起こるからである。

その際に在宅で看取ろうとする家族に、精神的・肉体的疲労が蓄積して、心身の健康を損なわないように、看取り介護対象者を支援する家族にもレスパイトケアが必要になるケースが増えるであろうことを想定して、ショートステイというサービスも看取り介護に対応させようとしてるのだ。

このようにして住み慣れた自宅で旅立つ人を支援するためのハードルを、できるだけ下げようというのが国の考え方であり、それが地域包括ケアの深化につながるとしているのである。

ところでショートステイ関係者は、ショートステイというサービスにも看取り介護機能の充実・強化を求められたことについて2つの視点から考えてほしい。

一つには前述したように、自宅で旅立つ人を看取る家族等が、その介護負担でつぶれてしまわないように、一定期間ショートステイを利用して休養しつつ、ショート事業所併設の特養関係者等から必要なアドバイスを得て、最終的に自宅で看取り介護を完結させるという視点である。

もう一つは、居宅介護は必ず成功するとは限らないという視点である。

家族を自宅で看取ろうとする介護者のうちの幾人かは、その役割と介護負担に押しつぶされて、当初行っていたことが徐々にできなくなってしまう人がいるということを理解してほしい。それを否定的に捉えて、「もっと頑張らなければ駄目だ」というふうに、変な努力を強要しないでほしい。

ここまで頑張ったんだから、その結果を尊重して、あとはショートステイという資源の機能を最大限に発揮して、家族に替わってショートステイというサービスの中で在宅者を看取るケースも有りだ。

その際には、ショートステイ事業所で家族が職員と共に最期の瞬間を看取るという機会を創ろうと考えてほしい。

どちらにしても、これからの時代はショートステイ事業所の中でも、看取り介護の実践が当然になるという理解が必要だ。

それはショートステイの機能としての基本的機能であり、特別な機能ではないのである。

では・・・介護関係者は、あらゆる場面で看取り介護に関わる専門家でなければならない。その為に、どのような覚悟や姿勢を持つべきなのだろうか。

そのことを少し掘り下げて、明日の更新記事で論じてみたいと思う。興味のある方は明日の昼休み以降に、こちらを覗いていただきたい。


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