全産業で労働力が減る中で、必要とされる介護人材の数を確保することは不可能であることが明らかになっている。

その為に求められるのが介護DXであり、介護の生産性向上である。

そこでは従前からの介護の方法論を抜本的に見直して、180度視点を変えた介護の新方式を創り上げていくことによって、従前より効率的な介護ができるのではないかという考え方である。

ICTやAI搭載ロボットの活用もその一つの手であるが、それによって劇的に介護サービスの場における人手を減らす効果があったり、業務負担が大幅に減少することがあったりすると考えるのは大きな間違いである。

人の手に替わって、それらのテクノロジーが担ってくれる業務は非常にわずかだからである。

そのよい例が見守りセンサーだ。その性能は年々向上し、誤作動もなく利用者の危険行動を察知して知らせてくれるように進化している・・・しかし察知した状態に対応するロボットや他の機械は存在していない。そこでは人の対応が不可欠であり、センサーの機能が向上すればするほど、人による対応時間も増えるという矛盾さえ生まれている。

巧緻性動作と力のいる動作を、一瞬のうちに切り替えてつなげて行動できる人間のようなロボットは、AIの進化だけでは実現できないのである。

だからこそ介護サービスの場における、人の動きを抜本的に変えて、業務改善することも必要である・・・しかしこの部分の介護事業者の対応は遅れている。

例えば同じように担い手不足の看護の場では、新しい方法論が生まれ、既に成果を出している。

それが「セル看護提供方式」である。

同方式は、福岡県にある民間の飯塚病院が開発し、道内では砂川市立病院がいち早く導入したもので、看護師がナースステーションで待機せず、病室や廊下など患者の近くで仕事をするスタイルである。

この方式は、ナースステーションから病室に向かう従来方式よりも効率が良く、患者の安心感も高まるという。
セル看護提供方式
看護師は従来、問診や採血の際や、ナースコールを受けて病室に向かっていたが、新方式では病棟全体を管理する看護課長のみステーションに常駐し、他の看護師は上の画像のように、パソコンや看護用器具をワゴンで持ち運び、病室や病棟の廊下で業務する。

原則2人一組で、8人ほどの患者に対応するという。

この方式のメリットは、ステーションから病室までの距離を往復する時間や手間が省けることであり、患者のケアに時間も人数もかけられるようになるという。また以前はナースコールで呼んだ看護師が来る前に、患者がベッドから離れ、転倒するケースがあったが、そうした事故が減少しているともいう。

この方式を取り入れた後、患者さんから、「看護師がすぐ近くにいるのはありがたい」という声が挙がり、看護師からは「患者と十分に話ができる」との声も聴かれ、双方から歓迎の声が上がっているという。

介護事業者も、こうした看護の新しい方法論を参考にして、介護職員がサービスステーションで待機したり、事務作業をこなす方法をやめて、居室のすぐ近くでPCやタブレットを利用して、利用者のニーズや要求に即応できる、「セル介護提供方式」を取り入れたらどうだろう。

看護の場で成功しているという実績を参考に、介護の場で新しい方法論に取り組むことこそ介護DXと言えるし、生産性の向上につながるのではないのだろうか。

やってみないで、できない理由を探すのではなく、まずはやってみることだ。その結果が思わしくなかった場合は、元に戻せば良いだけの話である。

そこで忘れてはならないのは、『Let's begin!』の精神である。

ともかく何かを始めようとする精神を失った時、退廃・腐敗が始まることを忘れてはならない。


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