若い頃、何の職業に就いているのかと聞かれ、「老人ホームに勤めている」と答えると、「お年寄りが好きなんですか?」と尋ねられたりした・・・。
意味が分からないと思った。
誰かに何らかのサービスを提供する仕事を選ぶとき、顧客属性が好みに合うかどうかということが問題になるのだろうか?
そもそも職業選択が、選択した職業の場に存在する何かが好きか嫌いかという感情で決まると考えるのもどうかしている。
市役所のゴミ収集車に乗っている人に、「ゴミが好きなんですか?」と聴く人はいないだろう。老人ホームを職場に選んだ人に、「お年寄りが好きなんですか?」と聴くことはそれと同じ意味である。
勿論世の中には、自分の好きなことをやりたいという思いを大切にして、それが実現できる職業を選ぶ人は少なくはない。
自分の得意分野は、好きな分野と重なることも多いので、結果的に自分の能力を生かす観点から職業を選んだ時、たまたまそれが好きな道だったということもあるだろう・・・だが自分のできることと、好きなことは違う場合もあって、できる仕事を選んだ結果、好きではなかった仕事が、働いているうちに好きになって続けているという人もいるだろう
そんなふうに職業選択の理由は様々だ。老人ホームに勤めているから、高齢者が好きなのかと尋ねるほど馬鹿げたことはないのである。
僕の場合は、たまたま進学した大学の選考が文学部社会福祉学科であり、そこでソーシャルワークの勉強をした結果、自分がそうした技術を使う仕事に向いていると思ったから福祉分野の就職先を選んだに過ぎない。
その時期が1983年当時であり、子供が減って高齢者が増えてきた時期と重なり、児童福祉の分野の就職先がなく、高齢者福祉の分野の仕事がたくさんあったという事情がある。特に全国の市町村にどんどん特養が新設されていた時代だったため、たまたまその波に乗って新設の社会福祉法人が運営する特養に職を得たに過ぎない。
そこで長年仕事を継続できたのにも理由がある。
新設の社会福祉法人で、経験者がひとりもいなかったことで、福祉の専門家と思われていた僕が、市役所の天下り施設長から頼りにされて仕事を任されたという事情もある。その時に誰も相談する人がいなかったわけではなく、母体の医療法人の相談室の先輩たちが力を貸してくれたということも大きい。
幸いなことに、それらの先輩たちからは、力を貸してもらい、助けられる一方で、何も見返りなんて求められなかった。パワハラやモラハラとは無縁で、可愛がってもらえたので、自由に仕事をしながら力をつけていくことができた。
そうした恵まれた環境と人間関係のおかげで、40年以上この仕事を続けられたわけである。
その恩返しの意味を込めて、僕の主催する「あかい花道場」では、北海道の後進に無償で教育を行い、育成に努めている。(参照:あかい花道場の現在地)
随分年を取ってしまったが、若い頃とは違う形で情熱は持ち続けられているように思う。だからもうしばらくは、そうした恩返しを続けていきたいと思うのである。
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