今月11日に更新した、「虐待防止措置未実施減算が新設されたという恥」でも書いたが、介護サービスの場で高齢者が虐待されるケースが後を絶たない。

本来、人の暮らしを護るはずの介護事業者が、人の暮らしを壊し、人の心を殺している実態が「高齢者虐待防止措置未実施減算」という恥ずべき費用減算を新設させた背景にあるということだ。

残念ながら大型連休を前にして、そうした恥ずべき虐待行為が新たに明らかとなった。

今月22日滋賀県は、野洲市にある特別養護老人ホーム「野洲篠原すみれ園」の運営法人に対して5/1〜1年間新規利用者受け入れ停止の行政処分を言い渡した。

この施設では、2023年の10月までに施設の介護スタッフ3人が入居者12人に対して、叩いたり、押さえつけるなどの虐待が15件もあったことが確認されており、その行為とは下記のように報告されている。
・利用者の顔や腕をたたくなどの身体的虐待
・利用者が介護を求めても「あなたの体が悪いから」と暴言を吐いて介護をしない心理的虐待


それだけではなく施設長はこうした介護スタッフの虐待を認識していたにもかかわらず、市に報告をせず、虐待による内出血のあった入居者の家族に対して「事故が原因だった」と虚偽の説明をし、虐待を隠蔽していたそうである。

今日の情報社会で隠ぺいは通用しないし、悪をはびこらせる結果にしかならないことに、なぜ気が付かないのだろう。

報道によると隠ぺいの理由は、「市から指導を受けたあとも、連続で虐待が発生し言いづらくなって隠ぺいした」というものだ・・・まったくガキっぽいとしか言いようがない理由である。

こうした人物が特養のトップを担っているのだから、利用者の尊厳をも護るなんてことはできないだろう。

この施設の公式サイトには、「心のこもったおもてなしをぬくもりのある空間で安心して暮らせる自分らしい暮らし」という理念が掲げられているが、それは皮肉にしか思えない・・・看板に偽りありといったところだ。

同サイトにはお詫びとお知らせ【不適切なケア及び法令遵守体制についての状況と改善策】が掲載されているが、ここでは隠ぺいの事実は載せられていない。当然そのことの反省や改善策も書かれていない。隠ぺい行為自体をなかったことにしたいのか・・・。

隠ぺい工作を行った施設長は、理事を解任されただけで、異動して終わりである。当該法人の別施設でトップを務めているのだろうか・・・本来なら解雇が最もふさわしい処分ではないのか?

虐待当事者は刑事責任も問われる可能性があるのだから、そうした行為を隠蔽した当事者には、もっと重たい処分を課すべきだと思う。

行政処分については、利用者の不利益を考慮して指定取り消しにはならなかったが、1年間の新規利用者の受付停止は経営に相当な打撃を与える。

特養の場合、年間退所者は平均2割程度だろう。この施設は100名定員だから20人強の退所者が出ることが予測されるが、そのベッドが埋められないということは収入的には大打撃である。物価高に対応したプラス改定がなかったことを考えるとかなり痛い・・・しかも処遇改善加算は、収入に対する加算だから、この施設ではその算定額も大幅に減ることになり、そのために従業員はもっと給料が高いところに転職してしまう可能性もある。

どちらにしても施設経営に大きな影響が出る問題だ。だからこそ経営者や管理職は、こうした虐待が起きないように、その予防策に真剣に取り組む必要があるのだ。

では、こうした虐待をなくすためにはどうすればよいのだろう。

高齢者虐待防止措置未実施減算が適用されないためには、 従業者に対し虐待の防止のための研修を定期的に実施することとされている。少なくとも年度ごとにこうした研修を行わねばならないわ毛であるが、「虐待をしてはならない」ということ自体は誰しもがわかっているわけである。

そうであればこうした研修で、虐待予防効果が期待できるようにするためには、その内容が問題になる。単に虐待行為を挙げて、そうした行為をしてはならないということに留まるような研修では意味がないということだ。

日常の介護の在り方や、その考え方が問題になることを強く意識し、どんな行為が不適切ケアに結びつき、それがどのようにして虐待行為に発展するのかということを、過去の具体例から示したうえで、そうした行為に繋がらないための考え方・職場環境の整備について具体的に示す必要がある。

しかもその具体策とは、「頑張らなくともできること」・「日常の業務の在り方をほんの少しだけ変えれば実現すること」でなければならない。

従業員全員が毎日必死に頑張らねばできないことなど実現しないからだ。

さらに一度虐待が起きてしまえば、どのような状態になるのかも、過去の例を紐解いて明らかにせねばならない。

僕は、そうした実効性のある「高齢者虐待防止講演」を全国各地で行っているので、是非講演希望の連絡を入れてほしい。

まずは問い合わせだけでも構わないので、あかい花公式サイトの右上の✉マークをクリックしてメール連絡してください。


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