医師という専門家の技術は、医師という資格ができる前から存在していた。

病気を治すための知識と技術を持つ者が、何の資格も拠り所とせず、自ら医者と名乗って治療を行っていた時代は、そう遠い過去ではない。

国家が医師という資格を創って、医業を行うことができる者をその資格者に限定したのは、医業という技術が生まれたずっと後のことである・・・だから国は、医師の資格の管理はできるが、医業という技術の管理はできない。

その為、一旦医師の資格を得た者であれば、自分が医師という仕事を辞めようと思わない限り医師であり続け、医業によって対価を得ることができるわけである・・・当然、その資格を更新する条件も存在しない。

一方で、介護支援専門員という資格は、介護保険制度と同時に創設され、介護支援専門員が行うことのできる仕事、行うべき仕事の全てを国が決めたという経緯がある。

もともとソーシャルワーカーという技術者が存在し、ケアマネジメントという援助技術が存在したといっても、介護保険制度の中で、介護支援専門員が行うマネジメントの方法やルール、給付管理などの仕事内容はすべて国が決定したのである。

その為、国は介護支援専門員の援助技術に介入できると考えている・・・いやむしろ国が積極的に介入しない限り、ケアマネジメントの質は向上しないとさえ思っている。

その為、今年度もケアマネジメントのあり方を論ずる新たな委員会、「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」の第1回会合が4/15に開催された。(資料

そこでの論点の1つが、ケアマネジャーの法定研修のあり方であり、更新研修の負担が費用面も含めて重いと感じているケアマネが多いという課題を共有したうえで、その運用を見直して負担軽減につなげるよう促す意見が相次いだ。

具体的には、「研修を分散させ、5年ごとに過度な負担を強いる現行の制度は見直すべき」という意見が示された。

しかし更新研修の廃止を訴える委員はおらず、「不要というのは極論」との声があがった・・・まったくこの委員会の構成員の頭は時代から大きく遅れている。今あるものをゼロベースで見直すことができる視点を全く持たない、古い脳みその集まりである。(参照:構成員名簿

地域で達人ケアマネと称されている人たちは、国による研修でそのスキルを保っているわけではなく、ネットからの情報を中心に新知識を取得しているんだ。そういう事実にも目が向けられない腐った脳みそを持つ人間を幾人集めても何の意味もない。

更新研修を不要とするのは極論だというなら、5年に一度受講するだけの研修にどんな意味があるのかを示してみろと言いたい。研修参加しても1日中居眠りして講義内容を全く記憶していない受講者もたくさん居る研修である。そんな研修を5年に一度行ったとして、それを分散開催したとして、いったいどんな意味があるんだ。
苦悩するケアマネジャー
そもそもインターネットでリアルタイムに発信情報が得られる時代に、獲得すべき知識を5年スパンで考える研修なんて意味がない。まともな介護支援専門員なら自ら有益な情報を手に入れるために、更新研修になんか頼らず、他の方法で情報や知識を手に入れている。(参照:ケアマネ法定研修カリキュラム変更に思うこと

上に書いたように、人の命を預かる医師でさえ、更新研修など存在しないのだ。それでも日進月歩の医療技術に対応する知識と技術を医業の場で得ているのだ。国が介入しないでも専門技術は時代の流れに対応して進化する性格のものなのである。

そもそも介護支援専門員は、医療福祉系の国家資格に基づく業務等を通算5年以上かつ900日以上従事することで「受験資格」を取得〜介護支援専門員「実務研修受講試験」合格〜介護支援専門員「実務研修」受講というハードルを越えてやっと実務に関わることができる職業だ。

そのハードルに加えて5年ごとの資格更新研修なんて必要なく、そうしたハードルを越えた者は、自らの援助技術が、利用者ニーズの変化に対応できるように、多様な研修機会を創ったり、研修情報をアナウンスしたりして、自主的に必要なスキル向上の機会を与えればよいだけの話である。

実務を離れて、利用者に迷惑をかけながら、大した知識にも結び付かない意味のない研修をなくそうという思考にならない時代遅れの頭脳が、いくらケアマネジメントを論じてたとしても、ケアマネの資質向上に結びつくことにはならないだろう。

そうであるがゆえにケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会も、あるだけ委員会でしかない。


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