国が主催する専門会議・委員会等の構成メンバーは、議論する問題に関する専門家であるかもしれないが、既に実務者ではないことが多い。
介護保険制度に関連した問題を論ずる委員の多くもそうである。さすればそれらの専門家は、過去の専門家であったとしても、今の専門家ではないのかもしれない。
そんなことを強く感じさせるのが「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」である。
その問題については今週月曜日に、「時代についていけてない頭脳がケアマネジメントを論じている」という記事を書いて論評したが、そこに書かなかった議論の中身もひどいものだ。
15日の検討会では介護支援専門員の人材確保も議題となり、青森県立保健大学の工藤英明教授は、定められた国家資格を取得し、一定期間の勤務経験を経てからでないとケアマネの資格を取る事ができない現状の仕組みについて「1本しか養成ルートがないことが課題」と指摘したうえで、「一定程度、ルーティン化できるケアマネジメントを業務範囲とする『準ケアマネ』といえる資格を創設し、学士卒からその資格を取れるようにすることも検討してもよいのではないか」と提案した。
・・・おバカにもほどがある。ケアマネに準ずる資格と言っても、その資格で仕事をする人は、当然ケアマネ有資格者より対価が低くなる。学士卒といっても、その中には社会福祉士の国家試験の合格者も含まれており、そういう人たちがケアマネに準ずる資格で仕事をしたいと考えるとは思えない。
そもそもケアマネジメント業務の一部を、現行のケアマネよりも下位の資格者に委ねるということは、ケアマネジメントの対価をダンピングするようなもので、そのことによってケアマネのコスパは下がらざるを得ず、ケアマネの資格の価値も下がることになりかねない。
ケアマネ不足が養成ルートの問題であると考えるなら、その養成ルートを見直すのが王道であり、本来ではないのか。
かねてからこのブログで何度も指摘しているように、ケアマネ受験ルートの要件に他の資格に基づく実務5年なんて必要ないのだ(参照:ケアマネ受験になぜ実務経験は5年も必要なのか)
そこでも指摘しているが、少なくとも社会福祉援助技術を大学で学び、社会福祉士や精神保健福祉士等の資格を取得した人については、実務経験なしで受験資格を得られるようにすべきだ。
そうすることによってケアマネ有資格者や実務者の数は大幅に増えるだろう・・・準ケアマネなんという中途半端な存在を創るより、よっほど効果がある。
この委員会の構成員は、なぜこんな単純なことがわからないのだろう。
それは彼らが実務者ではないからに他ならない。しかも時代の変化やニーズについていけない思考回路しか持たずに、机上の空論をひねくり回しているに過ぎないからでもある。
問題は変化の速度だ。急激な人材枯渇に対応した介護サービスの場の実務者は、その変化と同じスピードで変化することができるかどうかが死活問題だ。
しかし過去の実務者で、現在は実務から離れた過去の専門家たちは、この変化のスピード感が理解できないのである。変化が遅れれば遅れるほど、そこにいる利用者に対する対応は後手後手となり、強いてはそのことが利用者の不利益に直結してゆく。
委員という座にふんぞり返っている彼らに、その実感は薄いだろう。
優秀な頭脳を持ちながら、急激な変化についていけない、あるいは変化を嫌う人間が、介護保険制度を動かしているのだ。
彼らは、伝統と経験がすべてに対応できる時代が終わっていることに気が付いていない。
介護保険という制度内の問題を論ずるキャリアなり学識者なりの一人でも多くがそのことに気づき、変革の勇気を持つことを僕は願っている。
CBニュースの「masaが読み解く介護の今:特養経営者に朗報〜宿直配置基準の緩和」が25日アップされています。文字リンクをクリックしてご覧ください。
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更新研修を廃止したくないがための言い訳大会に成り下がった検討会が火に薪を焚べた状態です。
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