介護保険制度改正・介護報酬改定・基準改正の度に、行わねばならない会議や委員会が増え続けている。
今年度から居宅療養管理指導と福祉用具販売を除いた全サービスに新設された高齢者虐待防止措置未実施減算が適用されないためには、高齢者虐待防止のための対策を検討する委員会を定期的に開催しなければならない。(※頻度は指定されていないため、年度ごとに1度以上の実施で可と解釈されている)
施設サービスに適用されていた身体拘束廃止未実施減算は、短期入所と多機能系サービスに適用範囲が拡大されたうえで、これまで省令に身体拘束等の適正化対応の基準がなかった訪問・通所サービス・福祉用具貸与・販売・居宅介護支援の症例が改正され、適正化が求められたことで、これらの全サービスにおいて身体拘束等の適正化を検討する委員会を3月に1度以上開催する義務が生じた。
短期入所や多機能系サービス・居住系サービス・介護保険施設の基準改正では、3年間の経過措置期間を設けたうえで、生産性向上委員会の設置が義務付けられたが、本委員会は定期的に開催することが必要で、開催する頻度については本委員会の開催が形骸化することがないよう留意した上で、各事業所の状況を踏まえ、適切な開催頻度を決めることが望ましいとされている。
しかし生産性向上委員会を開催するのだから、同時に生産性向上推進体制加算を算定するのが合理的である。するとこの場合、生産性向上委員会は3月に1回以上開催しなければならない。(※生産性向上推進体制加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例等の提示についてにその根拠が示されている)
施設サービスに新設された協力医療機関連携加算を算定しようとすれば、基本原則として毎月医療機関との会議を行わねばならない。(参照:協力医療機関連携加算の会議要件をどうクリアすべきか)
ざっと思いついた委員会・会議要件を挙げただけで上記のような状態である。
こんなふうに会議や委員会の開催義務が増え続けていることによって、従業員が勤務時間中に会議に参加する頻度や時間が増やされることになる。
そこには看護・介護職といった直接処遇職員も参加する必要があり、それによって利用者対応の時間が減ることになる・・・そしてその状況は、必然的にワンオペ介護という時間帯も長く生み出されていくことにつながる。
しかも会議や委員会という場に参加する直接処遇職員は、介護職等を代表する声を挙げられるリーダー的立場の熟練職員であることが多い。
生産性向上の委員会のために、熟練職員が介護サービスの場に張り付く時間が削られれば、それだけで生産性は落ちるのではないだろうか・・・国はこうした矛盾にどう答えるのだろう。
そもそも介護は会議室ではできないという物事の本質をわきまえたうえで、このような会議・委員会の義務規定を次々に増やし続けているのだろうか・・・。
介護人材不足が制度改正・報酬改定の大きなテーマになる中で、それはあって当然と言える方向性なのだろうか・・・何か大きな間違いを犯してはいないだろうか。
エビデンスに結びつく多職種連携や医療介護連携が必要であり、その方策を共有するための話し合いの機会が必要なことはわかるが、そのために介護実践の場から人を削り取るような方策があってよいのだろうか・・・それも人材確保が困難で、その対策が(できるかどうかわからない)生産性の向上に頼らざるを得ない状況においてである。
最も重要な対策は何かということや、そのための優先順位を国はもっと現場の声を拾って考えてほしい・・・介護の事件も現場で起こっているのだから。
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私は経営のプロでも無いので施設経営者の方針がそういう方向性ならそれも仕方ない….とも思うのですが、御利用者が病気で倒れても、まるで「初めて知った」ような顔をして現場の過失を責めてくる…
現場職員にとってケアマネや相談員は上司の立場ということで何も言えないままになり、結果として何も言えないままの御利用者が一番がっかりする…という状態なのは本当にどうしようもなく辛い
仕事しているつもりの介護職員もタチが悪いですが、仕事をしているつもりの経営者は本当にどうしようもない
masa
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