今年度の介護報酬改定で新設され協力医療機関連携加算は、介護施設の入所者の病歴等の情報共有や急変時等における対応の確認等を行う会議を、医療機関との間で定期的に開催することを評価するものである。
そのことは、協力医療機関指定義務化と協力医療機関連携加算についてでも解説しているが、介護保険3施設はいずれも、この上位区分加算を算定したいはずである。
なぜなら一人につき100単位/月とか50単位/月という算定単位は、1年を通じて算定できれば、事業経営に利する収入に結びつくからだ。物価高に見合ったプラス改定になっていない介護事業にとって、それは決して見逃すべき加算ではない。

しかし問題は医療機関との定期会議である。この加算を算定するには、入所者の病歴等の情報共有を行う会議を定期的に開催しなければならない。
そこで問題となるのは、果たして忙しい医療機関の医師等が、この会議に定期的に参加できるかということだ。
勿論、医療機関側にも会議参加するメリットはある。
今年度の診療報酬改定で新設された、「協力対象施設入所者入院加算」は、介護施設の入所者の病状が急変した際に、当該施設に協力医療機関として定められている医療機関であって、定期的にカンファレンスを行うなど、当該施設と平時から連携体制を構築している医療機関の医師が、診療を実施したうえで入院の必要性を判断し、入院させた場合に算定できるもので、往診が行われた場合に600点、行われなかった場合は200点算定できるものだ。
その加算のために会議に参加するという動機付けは生まれるかもしれない。では会議でどれだけの時間をとられるのだろう。
解釈通知ではこの会議による入所者の病歴等の情報共有については、「協力医療機関に対して診療の求めを行うこととなる 可能性が高い入所者や新規入所者を中心に情報共有や対応の確認等を行うこととし、毎回の会議において必ずしも入所者全員について詳細 な病状等を共有しないこととしても差し支えない。」としているので、利用者を絞って時間を掛けずに実施することは可能だろう。
問題は頻度である。定期的の意味については、「概ね月1回以上開催。ただし、電子的システムにより当該協力医療機関において、当該施設の入所者の情報が随時確認できる体制が確保されている場合には、定期的に年3回以上開催する。」とされている。(※会議についてはオンラインでも可)
この要件を読むと、電子的システムで入所者の情報が随時確認できる体制であれば、会議は4か月に1度しか開催しなくてよくなるのだから、是非そうしたいと思うだろう。
しかしこの体制作りのハードルはかなり高くなっており、Q&A・Vol.3では以下のように示されている。
問3. 協力医療機関連携加算について、「電子的システムにより当該協力医療機関において、当該施設の入居者の情報が随時確認できる体制が確保されている場合には、定期的に年3回以上開催することで差し支えない」とあるが、随時確認できる体制とは具体的にどのような場合が該当するか。
答え:例えば、都道府県が構築する地域医療介護総合確保基金の「ICTを活用した地域医療ネットワーク基盤の整備」事業を活用した、地域医療情報連携ネットワーク(以下「地連NW」という。)に参加し、当該介護保険施設等の医師等が記録した当該介護保険施設等の入所者の診療情報及び急変時の対応方針等の情報について当該地連NWにアクセスして確認可能な場合が該当する。
この場合、当該介護保険施設等の医師等が、介護保険施設等の入所者の診療情報及び急変時の対応方針等についてそれぞれの患者について1ヶ月に1回以上記録すること。 なお、入所者の状況等に変化がない場合は記録を省略しても差し支えないが、その旨を文書等により介護保険施設等から協力医療機関に、少なくとも月1回の頻度で提供すること。
地連NWに参加するのも高いハードルだが、それ以上に「当該介護保険施設等の医師等が、介護保険施設等の入所者の診療情報及び急変時の対応方針等についてそれぞれの患者について1ヶ月に1回以上記録する」という要件は、あまりにも高すぎるハードルと言えるのではないのか・・・忙しい医師が毎月そんな記録に精を出してくれるとは思えない・・・。
そう考えると、地連NWに参加して医師に記録を毎月とるようお願いして会議の数を年3回にするより、そんなハードルのない状態で毎月の会議をオンラインで行う方が容易であると思えてくる・・・そのうえでできるだけ短時間で実施するという方法をとる施設が多いのではないだろうか。
僕が担当者だったら、そちらの方法を選ぶだろう。
どちらにしても早急なる協力医療機関連携加算の上位区分算定に向けて縦鼻を進めている担当者は、あたまっを悩ませながら医療機関との協議を進めていることと思う。
心身の不調に陥らないように注意しながら頑張ってほしい。
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ICTによる連携ネットワークが構築されていない限り、月1回のオンライン会議の方が、まだ現実的かなと思っています。
加算を取りにいく関係上、協定を結んでおきたい所ではありますが……介護側の協定要件が、医療機関側にとって重みになっています。
特に夜間帯における医師の訪問については、医師の働き方改革の影響もあり、極めて厳しい状況です(中小病院の夜間当直医師はだいたい1名)。
その為、双方の事業所にとって加算を取得できる内容の協定書を結ぶには、実務者同士(事務長や相談員)の話し合いで、条件のすり合わせが必要と思います。
病院の相談員は忙しそうで敷居が高い……と感じる方もいらっしゃるかと思いますが、是非とも、勇気を持ってお声掛けいただいて良いと思いますし、ハードル高いかな……という場合は、医師会に相談するのもありかと思います。
私感ですが、今回の当加算を満たす要件は、単に地域事業所同士の連携強化だけではなく、多死社会に備えた一手だとも考えています。
(死亡診断書の記入マニュアルが3/28改定され、条件を満たせば、担当していなかった医師でも死亡診断書の交付が可能になりました)
masa
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