今年度の介護報酬改定では、居宅療養管理指導と特定福祉用具販売を除く全サービス横断的に高齢者虐待防止措置未実施減算が新設された。

所定単位数の100分の1に相当する単位数の減算対象となるのは、虐待の発生または再発を防止するための委員会の開催・指針の整備・研修の実施・担当者を定めるという4点のいずれか一つでも実施できていない場合である。

介護事業者がサービス利用者を虐待しないということは極めて当たり前である。虐待しない事業者が良い事業者というわけではないのだ・・・だからこそ万が一にも虐待という行為に走る従業員がいないように、防止措置を多重化して取っておくということが求められているのだろう・・・。

だがなぜ今、多種類サービス横断的に高齢者虐待防止措置未実施減算が導入されたのかという意味を介護関係者は考えなければならない。

減算導入ということは罰則強化という意味なのだ。それをしなければならないほど、介護サービスの場で高齢者が虐待されるケースが後を絶たないと思われているからではないのだろうか・・・。

勿論、大多数の介護事業者や看護関係者は虐待とは無縁の対応を行っていると思う。しかし我が国全体の介護サービスの状況を見渡した時、月単位でどこかの介護事業者で虐待事件が起きていることが報道されている。そのことによって報道される介護サービスの場での虐待事件は氷山の一角であり、もっと多くの虐待事件がそこかしこの介護事業者で行われているのではないかというふうに思われている。

虐待とは無縁で、日々利用者の暮らしの質を向上させるために努力している介護事業者や関係者も、虐待を行う事業者や従業員と同様にみられているのである。
介護事業の闇
一昨日も高齢者介護施設における虐待事件が報道された。4/9勤務先の福祉施設の入所者に暴行を加え負傷させたとして、群馬県警高崎署は9日、傷害の疑いで、高崎市の介護福祉士・永瀬智也容疑者(45)を逮捕したというニュースだ。

逮捕容疑は8日午後4時半〜同5時半ごろ、容疑者が入所していた90代の女性をベッドに移す際、女性の髪をつかんで投げ飛ばしたり、足で蹴るなどしたりして、左手首骨折や右ろっ骨の損傷など全治4週間のけがを負わせた疑いである。犯行動機について容疑者は、「言うことを聞かないので、イライラした」と話し、容疑を認めているという。

言うことをきかないだけで、髪をつかんで投げ飛ばしたり、足で蹴るという行為に及ぶこと自体が理解できないが、こうした人間がなぜ介護福祉士という資格を取得し、高齢者介護施設(事業種別は不明)で働いていたのか。

そもそも利用者が従業員の言いなりになるわけがない。それぞれ個性が異なり、意思がある人がそれぞれの考えで何かをしようとするのだから、施設や従業員の都合に合わせて動いてくれるわけではないのだ。

それを集団生活だからとか言いながら、変なルールを押し付けようとするから従業員の意識が低くなるのだ。特養やGHなどの高齢者福祉施設は集団生活の場ではない。そこは強いられた共同生活の場にしか過ぎず、集団論を通用させてはならない場所である。

共同生活の中で、きちんと個別のニーズに対応した暮らしの支援をする専門家を育てるのが、高齢者福祉施設の経営者や管理職の責任である。

事件が起きた高崎市の高齢者福祉施設では、きちんとした従業員教育や適性判断ができていたのかが問われるが、これほどひどい犯罪が介護サービスの場で行われている事実が、虐待と無縁の介護事業者が大多数であるという訴えを霞ませて、それが事実ではないと世間一般に思わせてしまうのである。

人材が足りないから、本件の容疑者のような従業員が増えているのかもしれないが、人の暮らしを支え護る介護事業の本質を揺るがせないためにも、今一度人材採用と教育というマネジメント部分を強化する対策をとってほしい。

そうして改善していかないと、介護事業が社会の必要悪とされてしまう恐れがある。そうなれば誰もそこで誇りをもって働くことなんかできなくなる。そして人材は益々減り、事業経営もできなくなってしまう。

そうならないように高齢者虐待防止措置未実施減算なんて必要のないと云われる介護業界にしていかねばならない。心からそう思う。
masaの選ばれる介護経営
※株式会社マイナビの情報サイト・メディカルサポネットの菊地雅洋の波乱万丈!選ばれる介護経営〜Vol.4のテーマは、「処遇改善加算の恩恵がない居宅ケアマネジャーの待遇改善をどう考えるか」です。是非参照ください。


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