先週金曜日の北海道新聞1面では、道内企業賃上げ率過去最高という文字が躍っていた。
4/4に連合が公表した2024年春闘の第3回中間集計(2日時点)によると、道内企業全体の賃上げ額は前年同期比4.923円増の月1万6.037円で、この時期の集計がある13年以降で最高水準となっている。
これは率にすれば4.69%のアップとなる。
僕の地元ともいえる室蘭市も大企業を中心に初任給がアップしており、中小企業はそれに追いつけないとは言っても、かつてない賃金改善が行われていることが4/6道新胆振版でも報道されている。
このように賃上げ状況が率過去最高となっていることは、景気がよくて良いことだと考えるのが普通だ。しかし介護業界関係者にとっては、その言葉がそのまま事業経営の危機に直結する問題となっている。
連合の調査対象となっている一般企業で月額1万6千円を超える賃上げが行われている中で、介護事業者はこの4月にいくらの賃上げができたのかという問題である。介護事業者の場合、賃上げ額が1万円に達しないところがほとんどではないのだろうか。
介護事業者の処遇改善加算は令和6年度のアップ率が2.5%でしかない。民間企業が4.69%もの賃上げを行っている中で、その差は歴然である。
パート職でもその差が広がっているように思われる。
介護業界と同じように人が足りないと言われる飲食業のパート求人の時給は1.200円を超えているところが多くなった。
パート職の募集で時給を1.200円以上に設定している介護事業者は果たしてどれだけあるのだろう・・・。
しかし介護事業は、人に替わって機械が行うことができる行為が、物を売る商売と比べても少ない職業である。人が居なければどうしようもないのである。
こうした状況を鑑みると、介護事業経営者は処遇改善加算は必ず最上位区分を算定しなければならないと考えるのと同時に、処遇改善加算だけに頼った給与改善では人は寄り付かなくなると考えなければならない。
顧客を数多く確保し、事業規模を大きくしてコストパフォーマンスを上げなければならないし、施設サービスは空きベッドを減らしていかねばならない。
顧客が増えなかったり、空きベッドが生じたままであれば、加算をいくら細かく算定しても無意味になる。そのことを従業員に理解してもらわねばならない。そうした意識を全従業員に浸透させる必要がある。
利益を挙げなければならないとか、収益をアップさせるために○○をしなければならないことを、経営者や管理職が声高らかに唱えると、拝金主義だとか、利用者の利益を無視した社会福祉にあるまじき考え方であると批判する向きがある。
しかしそれは違うと説明し、理解を求めるべきだ。介護事業において利益を求めることは、介護事業経営者等が利用者から搾取することではないのである。それは介護事業を安定的に経営し、従業員とその家族を護ることであり、そのことは結果的に利用者の暮らしを護ることなのである。
利用者の暮らしの質の向上・・・国民の福祉の向上のために介護事業者は経営を安定的に継続できる収益を必要とするのである。
しかし3年間変動のない公定価格で運営する介護事業は、所詮民間企業と同じような利益をあげられないし、従業員への利益配分もかなわないだろう。
そこで必要となることは、収益を上げる努力と同時に、人の暮らしに関わる従業員の動機づけを護ることだ。人の役に立つ仕事に就きたい・誰かの暮らしに手を差し伸べて喜んでもらえる職業に就きたいという動機づけを護った働き方ができる環境づくりを忘れないことだ。
この動機づけを失った時に、そこから人材はどんどん失われていくのである。
介護事業経営者は、従業員の待遇改善にできるだけ努めるだけではなく、介護という職業を生き方として選んだ人々が、どのように自己実現ができるかという両面を考えていく必要があるのである。
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