厚労省老健局の間隆一郎局長が10日、日本介護経営学会で「ケアマネジャーの皆さんはシャドーワークが非常に多い」と指摘し、無償のボランティア的業務が行われていることを問題視する発言を行った。
その発言とは、「例えば、スーパーで買物をしてきてくれと当たり前のように言われる。もちろんその方(高齢者)にとっては必要で意味のあることだが、それはケアマネジャーがシャドーワークで、無償で行う話なのかどうか、整理していかなければいけない」というものである。

これは僕がかねてから問題視していることと完全に一致する発言内容である。
介護支援専門員向けの僕の講演を受講した方ならお判りだろうが、かねてから僕は、ケアマネジャーに役割だけ求めて対価を発生させないことは、介護支援専門員という資格を社会の底辺資格に貶めるものであると指摘し続けてきた。
今回、その問題を老健局長という官僚トップが公の場で、「シャドーワーク」という言葉で表したことは意義があることだと思う。そういう意味では、「局長よ、よくぞ言ってくれた!!」とエールと拍手を送りたいと思う。
だが同時に、ケアマネジャーのシャドーワークが増えてきた元凶は厚労省にあるということも指摘しておきたい。
例えば適切なケアマネジメント手法の策定・普及推進(2016年〜10か年計画)として、来年度から介護支援専門員の法定研修カリキュラムが変更されるが、その目的は、「幅広い視点で生活全体を捉え、生活の将来予測や各職種の視点・知見に基づいた根拠のある支援の組み立てを行うことが介護支援専門員に求められていることを踏まえ、そのような社会的要請に対応できる知識や技術を修得できるように科目の構成を見直す」とされている。
そこではヤングケアラーの支援や、介護離職の対応等の役割をケアマネに求めているが、それに対して対価が発生する方策を考えていないことが問題である。
2024年度の居宅介護支援費の改正でも、特定事業所加算のすべての区分に、ヤングケアラー支援をはじめ、障害者・生活困窮者・難病患者等の高齢者以外の対象者支援の知識を得る研修等への参加義務要件を組み込んでいるが、加算算定額がわずかに上がっただけで、それが役割にふさわしい対価とは言えない。
プロに対する最も失礼な役割付与になっているのである。これこそ介護支援専門員のシャドーワークがそこかしこに創り出されている元凶ではないのか・・・ここを変えないで、学会で問題点だけ指摘してどうするんだと言いたい。
ということで、今回介護支援専門員が対価の発生しないボランティア的業務を行っていることが問題点として、議論の俎上に上ったわけであるのだから、対人援助のプロに対する適正な対価とは何かという議論を推し進めてほしい。
このブログで何度も指摘しているように、プロは金銭によって出力するのであり、適正な対価を求めることは恥ずかしい行為でもなければ、福祉にあるまじき姿勢でもないのである。
要介護者の方々にとって、自分の暮らしの支援についていつでも相談できる担当者が地域に存在し、実際に総合的支援のマネジメントに携わってくれるという安心感は半端ではない。そういう意味で介護支援専門員の誕生によって、日本の福祉の底辺は大幅に引き上げられていると言ってよいのだ。
そういうプロに対して正統なる評価とは、口先だけではなく、正当な対価によるという当たり前のことを実現させてほしい。
話は変わるが、来週3/18(月)18:30〜20:00、室蘭市市民会館で行われる室蘭介護サービス事業所連絡会研修で「令和6年度介護報酬改定について」をテーマにした講演を行う予定になっている。
地元室蘭で講演を行う機会は意外と少ないので、今回は僕の講演を聴く絶好の機会である。室蘭介護サービス事業所連絡会会員の皆さんは是非会場まで足を運んでほしい。18日は室蘭市市民会館で愛ましょう。
※メディカルサポネットの連載記事、「菊地雅洋の波乱万丈!選ばれる介護経営」の(第3回)2024年度介護報酬改定と基準改正の概要を見据えて思うことが更新アップされているので、ぜひ参照していただきたい。

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