介護施設の基準改正に関連して1/30に、「介護施設に課せられた新たな義務を見逃していないか」という記事をアップし、「施設の従業者又は歯科医師若しくは歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が施設入所時及び入所後の定期的な口腔の健康状態の評価を実施すること」が新たに義務として課されるために、その対策を急ぐようにアナウンスした。
だがその記事を書いた時点で僕は、「入所後の定期的な口腔の健康状態の評価」については、利用者全員が対象であるという負担も考えて、年1回程度ではないかと予測していた。
それらのことに関連して3/9に解釈通知が公開されたが、指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準についてでその部分をみると下記のように示されている。(※リンクを貼った通知分の6頁)
18 口腔衛生の管理
(2)当該施設の従業者又は歯科医師等が入所者毎に施設入所時及び月に1回程度の口腔の健康状態の評価を実施すること。
ということで僕の当初予測は大外れとなってしまった・・・これによって介護保険施設(特養※地域密着型を含む・老健・介護医療院)においては4月以降、毎月全利用者の口腔の健康状態の評価を実施しなければならなくなる。
「月に1回程度の口腔の健康状態の評価を実施」という文言になっているので、必ずしも毎月ではないのではないだろうかという疑問を口にする人も居るだろう。しかし2月に1回しか行っていなかった場合は、明らかにこの基準に違反するとみなされるだろう。
おそらく「月に1回程度」という意味は、利用者によっては何らかの事情で評価を実施できない月があるという想定上の文言であり、原則上は全利用者に毎月の評価が求められてくるのだろうと思われる。

しかしこれは大きな業務負担である。評価自体は、年2回実施が求められている施設職員に対する歯科衛生士の指導を受け、施設職員(看護職員もしくは介護職員)が行うことになるだろうが、全利用者となると、複数の担当者で手分けして行わないと日数と時間がかかってしまう。
手分けして何とか1日で評価を終えようとしても、評価に関わっている間は、その評価以外の介護実務からは外れなければならないわけである。
常に人手が足りず、生産性の向上が叫ばれている介護施設としては、このような評価に介護職等の労力をかけなければならないことは大きな業務負担である。
健康を維持するための良好な栄養状態と、自立支援・身体機能維持は深いかかわりがあり、その栄養状態を維持するための口腔機能の維持・改善も重要であることは理解できる。
その為、2024年度の報酬改定では、居宅サービス・施設サービス両者において、リハビリテーション、口腔、栄養の一体的取組の推進が掲げられて、その取り組みに対する新たな評価加算も設けられている。
そのこと自体は間違っていないと思うが、その目的を達するために、全利用者に対して毎月口腔機能の評価を行う必要性が本当にあるのだろうか・・・特に口腔ケアを行っている利用者については、毎日口腔状態を確認しているようなものなのだから、改めての評価は必要ないだろう。
LIFEへの情報提供が必要なすべての加算の情報提出頻度を3月に一度に統一したことを考えると、口腔機能評価もその期間に合わせて3月ごとでよいのではないだろうか・・・それでも多いような気がするけどな。
口腔機能と健康状態・身体機能維持を結びつけるのは科学であると言えるが、そのために機械的に毎月評価を求めることは非科学的ではないのか。
そもそも次期報酬改定のテーマの一つとして、生産性の向上が掲げられて、それに関する新基準や加算が複数設けられているが、利用者全員一律に毎月口腔評価を求めることは、介護実務の生産性を低下させるのではないかと思う。
国のやることなすこと、すべて中途半端で、ちゃらんぽらんだ。現状に即した改革に結びつかないのは、所詮机上の空論から脱していない現状があるからではないのか・・・。
まったくくだらない基準改正である。
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