2024年3月末をもってBCP策定義務の経過措置期間(策定猶予期間)が切れる。
それに伴い、業務継続計画未策定事業所に対する減算が導入され、施設・居住系サービスは、所定単位数の100分の3に相当する単位数を減算し、その他のサービスは、所定単位数の100分の1に相当する単位数を減算しなければならない。
減算対象となるのは以下の基準に適合していない場合である。
・感染症や非常災害の発生時において、利用者に対するサービスの提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(業務継続計画)を策定すること
・当該業務継続計画に従い必要な措置を講ずること
※令和7年3月31日までの間、感染症の予防及びまん延の防止のための指針の整備及び非常災害に関する具体的計画の策定を行っている場合には、減算を適用しない。訪問系サービス、福祉用具貸与、居宅介護支援については、令和7年3月31日までの間、減算を適用しない
つまりBCPを策定しているだけでは減算回避にはならず、当該業務継続計画に従い必要な措置を講じていなければならないわけである。その措置とは委員会の開催、指針の整備、研修の実施等に加え、訓練(シミュレーション)を指す。
そのため本来であれば、施設サービスの場合は今年度中に訓練(シミュレーション)を2回以上実施していなければならないことになる。
しかしBCP策定に手間取って、その策定が精いっぱいで、委員会の開催や訓練(シミュレーション)が実施ができなかった事業者も少なくない。その為経過措置として、来年度1年間に限りBCPさえ策定できておれば、委員会や訓練(シミュレーション)等については行われていなくとも減算されないとされているわけである。
(※令和6年度介護報酬改定における改定事項について)の48頁を参照してください。)
そのため経過措置が切れる2025年4月から減算を適用されないようにするためには、2024年度中には必ず必要とされる要件をすべてクリアしておく必要があることに注意しておく必要がある。

ただし来年度いっぱいは減算が適用がされないからといって、今年度中に求められている委員会の開催、指針の整備、研修の実施、訓練(シミュレーション)のいずれかでも要件通りに実施されていなければ運営基準違反になり、文書指導は受けるのだ。
その際に、減算だけは適用猶予するという意味にしか過ぎない。このところを勘違いしないようにしてほしい。
そもそもBCPは策定義務があるから策定し、減算適用されないように要件をクリアしておくという考え方が間違っている。
新型コロナウイルスは感染症分類が変わったといっても、クラスター感染が完全になくなったわけではない。そもそも新たな感染症は10年サイクルで起きており、コロナ禍の10年前にはSARS(重症急性呼吸器症候群)が流行したし、その10年前には新型インフルエンザが蔓延した。
これから先の10年以内に新たな感染症によるパンデミックが発生する確率は極めて高いのである。
さらに今年元日の能登半島地震を振り返ってもわかるように、日本列島は毎年過去には考えられない形と規模の自然災害に見舞われている。
これらのことを考えると感染症や自然災害発生時のBCPは介護事業者の命綱ともいえるのだ。
しかもBCPは策定するだけではなく、実際にその内容が現実に合致するのかという訓練(シミュレーション)によりバージョンアップしていかないとならない。最初に策定したものが、そのまま実地に使えて、修正の必要がないということは稀である・・・というか僕はそんな例を知らない。
やってみて初めて不都合が見えてくるのである。訓練でそうなのだから、実際の災害時等は、もっと現実に合致しない状況が生まれると思える。
だからこそ経過措置期間の有無にかかわらず、策定を急いで、なおかつ委員会での検討や訓練(シミュレーション)を繰り返して、実際の感染症や自然災害の発生時に使えるものにしていくという考え方が求められるのである。
そういう意味で、BCPの策定と訓練等の要件を、運営指導対策と勘違いしてはならないのである。
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