僕が管理する表の掲示板に、2/15に建てられたスレッドで、地域包括支援センターが、あたかも居宅サービス計画がサービス利用(保険給付)の条件であるかのような指導をしていることに疑問が呈されている。
その地域の包括支援センター職員が、緊急的なサービス利用のケースであったとしても、サービス利用の前に必ず担当者会議を開催して、目標の設定がないとサービス利用はまかりならんというのである。
しかしその考え方は二つの点で間違っている。
一つには老企22号解釈通知の規定である。「利用者の課題分析(第6号)から担当者に対する個別サービス計画の提出依頼(第12号)に掲げる一連の業務については、1条の2に掲げる基本方針を達成するために必要となる業務を列記したものであり、基本的にはプロセスに応じて進めるべきものであるが、緊急的なサービス利用等やむを得ない場合や、効果的・効率的に行うことを前提とするものであれば、業務の順序について拘束するものではない。ただし、その場合にあっても、それぞれ位置づけられたここの業務は、事後的に可及的速やかに実施し、その結果に基づいて必要に応じて居宅サービス計画を見直すなど、適切に対応しなければならない。」とされているからだ。
6号から12号とされているのは、指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成十一年厚生省令第三十八号)の第十三条のことであり、9号に規定されているサービス担当者会議も手順前後して良いことになっているので、実際のサービス提供の後になることもあり得るのだ。
この点においても、質問スレッド内の地域包括支援センターの見解は間違いであると言える。
二つには、そもそも居宅サービス計画は保険給付の条件ではないということだ。
介護保険法では居宅サービス計画は、償還払いサービスを現物給付化する手段と規定されているために、利用者がサービス利用時に、費用全額を居宅サービス事業者に支払い、後日市町村から自己負担分を除いた金額の払い戻しを受けるという償還払いで利用する場合は、居宅サービス計画は必要ないのである。
上の図は、僕が介護支援専門員向けの講演で使っているスライドの一枚である。
このようのサービス提供の条件となっている計画は、施設サービス計画と居宅サービス事業所(訪問介護や通所介護・通所リハビリ等)の計画なのである。
利用者が最初から、償還払いでサービスを受けても良いとするなら、居宅サービス計画のないサービス利用を介護事業者は拒むことはできないのである。その場合は、居宅サービス利用の目標なんて、最初から最後まで存在しないということになる。
よって目標がないことをもって、「サービス利用できない」という解釈は、まったく根拠に欠ける思い込みでしかないということになる。
この点をすべての介護関係者が理解しておく必要がある。なぜなら今後は、やむにやまれず償還払いでサービス利用せざるを得ないケースが増えてくるからだ。
北海道の郡部などの一部地域では居宅ケアマネが足りない、もしくはいない地域が出現している。その為、近隣市町の居宅介護支援事業所に居宅サービス計画の作成を依頼するケースが増えている。
しかしそれにも限界があり、やむを得ず市町村職員が利用者にアドバイスして、セルフプランでサービス利用し、現物給付化している現状がある・・・いづれそれもできなくなる地域が出てくるだろう。
その時には、利用者に償還払いの承諾を得て、プランなしでサービス利用してもらわざるを得ないケースが必ず出てくる。居宅ケアマネが足りない地域で、セルフプランも作成できない人は、そうしないと介護保険サービスと結びつくことができないからである。
それに備えて、居宅サービス事業所の従業員の皆様にも、居宅サービス計画なし=保険給付されないではなく、居宅サービス計画なし=償還払いでサービス利用という法令ルールを理解していてもらいたい。
緊急やむを得ないケースで、市町村から居宅サービス計画がない償還払い利用の依頼があったとき、「償還払いって何?」・「償還払いの場合、どのような手続きを踏めばよいの?」なんて恥ずかしいことを言っていられないのである。
そうしないと地域の福祉レベルは護ることができない事情が、日本のそこかしこに生まれつつある危機的状況を理解せねばならない。
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