2/6にアップした、「諸手を上げて喜ぶことができないプラス改定の中で」は、介護保険施設に新設された協力医療機関連携加算についての解説した記事だ。

そこでも指摘したが、新加算の上位加算は算定単位が大きいため、施設経営を考えると是非とも算定したい加算である。

この加算は、介護施設等と医療機関の間で入所者等の病歴等の情報を共有する会議を定期的に行うことで算定できるが、上位加算を算定するためには、利用者の病状変化の相談体制や必要な際の診療体制・緊急の入院体制等が確保されている医療機関と会議を行う必要がある。(※詳細はリンクを貼った2/6の記事を参照願いたい

問題はそのような体制を確保してくれる医療機関があるかということである。

母体が医療機関である介護保険施設であるなら、この体制確保は比較的容易であろう。しかしそうでない介護保険施設が、外部の医療機関とこうした体制確保の契約を結ぶことは、医療機関側に相当のメリットがないと難しいと言える。
協力
そのため、この度の診療報酬改定(2024年6月施行)において、在宅療養支援病院、後方支援病院などの基準に、特養や老健の協力医療機関を担うことが望ましい旨を加筆することとされた。あわせて、介護施設の入所者が急変した際に、そこの協力医療機関となっている病院が入院で受け入れたり、往診したりするケースも診療報酬上で新たに評価することとしている。(※協力医療機関が入院で受け入れる際の加算

さらに介護施設の入所者の病状が急変した際に、当該施設に協力医療機関として定められている医療機関であって、定期的にカンファレンスを行うなど、当該施設と平時から連携体制を構築している医療機関の医師が、診療を実施したうえで入院の必要性を判断し、入院させた場合の評価が下記の通り新設される。

協力対象施設入所者入院加算
(1)往診が行われた場合 600点
(2)1以外の場合    200点

≪対象患者≫介護施設の入所者で、当該施設の協力医療機関に事前に受診したうえ、入院することになった患者

このように診療報酬でも加算が新設されたことで、協力医療機関連携加算の要件となる医療機関との協力・連携体制がとりやすくなっている。

診療報酬改定は施行時期が6月にずれているため、介護保険施設や居住系サービスの新加算との算定時期とも違いが生ずるが、体制を整えておくことに算定時期のずれは関係ないだろう。

よって是非とも介護・診療のそれぞれの新加算を算定できるように、連携できる医療機関と体制の整備を早急に進めてほしい。

医療・介護連携のための診療報酬改定ではこのほかに、かかりつけ医にケアマネジャーとの連携を更に深めるよう促す要件が加わっている。

医療機関のかかりつけ医機能を評価する、「地域包括診療料※参照)」の算定要件に、『通院する患者について、介護支援専門員・相談支援専門員からの相談に適切に対応するとともに、その対応が可能であることを見やすい場所に掲示すること』が加えられた。
※複数の慢性疾患《高血圧・糖尿病・脂質異常症・認知症・慢性心不全・慢性肝臓病のうち2つ以上》を有する患者に対し、継続的かつ全人的な医療を行うことの評価

さらに新たな施設基準として以下の3点を加えている。
以下の(1)〜(3)のいずれかを満たすこと
・担当医がサービス担当者会議に参加した実績がある
・担当医が地域ケア会議に参加した実績がある
・介護支援専門員と対面、あるいはICTを用いた相談の機会を設けている


サービス担当者会議や地域ケア会議への参加実績が、どの機関まで見られるものなのかという点と、過去に1回でも参加しておれば実績となるのかという点は、解釈通知等待ちであるが、どちらにしても介護支援専門員が、医師と直接コミュニケーションを交わしながら、利用者情報を共有する機会は増えることになる。

そうであるがゆえに、介護支援専門員には医師という医療の専門家と対面、あるいはオンラインであっても、向かい合って対等に話し合えるコミュニケーションスキルが求められてくる。

基礎的な医学知識も当然求められてくるだろう。介護支援専門員はそれに備えて、きちんとスキルアップに努めなければならない。


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