2000年4月に介護保険制度がスタートした当時、施設サービスでは大きな混乱が起こった。

施設利用者と介護事業者の契約になったことで、保険外の費用を利用者に直接請求できることになり、その費用の範囲が拡大解釈される傾向があったのである。

特に通院支援について保険外費用であるとして、たくさんの介護保険施設が利用者に通院費を請求した経緯があり、そのため下記のようなQ&Aが発出された。

WAM-NET Q&A【介護保険施設】通院における移送について
Q.入所者が通院する際に、施設の車で送迎することは可能と考えますが、いかがでしょうか。なお、送迎を行う職員の人件費、車両使用にかかる費用は、施設が負担する。
A.貴見のとおりです。
WAM-NET Q&A【介護老人福祉施設】入所者の通院の際の付き添い費用について
Q.標記の場合は、介護職員の人件費、車両の使用にかかる費用等は別途入所者から徴収することは可能か。
A.指定介護老人福祉施設の入所者の通院にかかる設問の費用については、徴収することは出来ない。基本的に当該施設の介護サービス等の一環として行われるもの。(従来の取り扱いと同じであり、介護報酬上も当該費用を報酬外のものとしてはいない。) ただし、遠方の医療機関への入院等の場合は、交通費について実費相当を徴収することは差し支えないと考える。

このように通知され、2000年度中あるいは2001年度の実地指導で、通院費を自己負担させていた介護施設は返還指導を受けたのである。この際に、通院回数が多く、時間も長時間に及ぶ透析通院についてのQ&Aも同時に示されたが、そこでも次のように費用徴収は不可とされている。

WAM-NET Q&A【介護老人福祉施設】入所者の通院介助について
Q.入所者の通院に係る費用は施設で負担することが原則ですが、人工透析で週3日通院している場合も特別な場合でなく本人から費用徴収することはできないのでしょうか。
A.本人から費用を徴収することはできないものと考える。
WAM-NET Q&A【短期入所生活介護、短期入所療養介護】短期入所中の者が通院した場合の費用について
Q.短期入所中に人工透析等で通院する必要がある場合、付き添いに係る費用は、別途利用者から徴収できないと考えてよいでしょうか。
(背景)
この場合の付き添いにかかる費用は、介護報酬に含まれるものであり、施設入所の場合と同様、別途利用者から徴収できないと考えます。
A.御質問のとおり、通院について利用料の徴収はできません。 なお、人工透析中の管理については、人工透析を行う医療機関に一義的な責任があると考えられます。 

↑このように透析通院も施設の基本サービスであるという解釈が確定している。

しかし施設側からすれば、透析通院の支援は回数も多く、時間も長いために大きな負担である。この間、付き添いの職員と運転手が一定時間、そこに張り付かねばならない。「人工透析中の管理については、人工透析を行う医療機関に一義的な責任がある」といっても、透析中に通院に付き添った介護職員が待合室などで待機することを求める医療機関も少なくない。

多くの介護施設が人材難である今日の状況では、そのような長時間かつ頻回な通院付き添いは、シフト勤務を回せなくなる元凶になりかねず、透析が必要な利用者の通院支援は、施設の体制上困難であるとして、入所判定で受け入れ困難とすることに繋がっている。

ショートの受け入れの際も、透析通院だけは家族が行う場合に受け入れる施設も少なくない。

入所やショート受け入れについては、当該施設の医療体制とのマッチングを検討して良いために、それらの入所拒否や利用拒否は、「正当な理由によるサービス提供拒否」とされ認められているのである。

そのため2024年報酬改定では、透析を必要とする一定以上頻回に行われる通院介助について算定できる特別通院送迎加算(594単位/月)
が新設された。

算定要件は次の3条件に当てはまる場合である。
…蟯的かつ継続的な透析を必要とする入所者
家族や病院等による送迎が困難である等やむを得ない事由がある者
施設職員が月12回数以上の送迎を行う


一般的に透析は日中に1回4〜5時間の時間を要し、週3回ほど行うケースが多い。しかし4〜5時間というのは透析を受ける時間であり、医療機関までの往復移動時間や待ち時間を含めると、通院支援は1日仕事になるケースも多い。

国は今回の加算新設については、送迎に大きな業務負担、コストが伴うことを考慮したものであるとし、透析が必要な高齢者の受け入れを断る施設も少なくないのが現状で、その改善につなげる狙いがあるとしている。

しかし594単位/月の費用を目当てに、透析通院が必要な人を積極的に受け入れようとする施設はほとんどないだろう。わずか6千円に満たない費用を算定するより、通院支援で介護職員がひとり施設内業務から外れなければならないデメリットを考慮せざるを得ないからだ。(※そもそもこの加算の算定額は、12回通院だとしたら1回わずか495円:時給勘案すればわずか120円程度だろう人を馬鹿にした金額ではないのか・・・。

施設入所後に透析通院が必要になり、身寄りがないなどの理由で、家族の通院支援が困難なケースで、現在やむを得ず透析通院の支援を行っているのであれば、それに対して加算算定ができるようになるのはありがたいと考えることはできるが、それ以外のメリットはほとんどないと言ってよい。

よってこの加算新設で、透析が必要な高齢者の受け入れを断る施設が少なくなることはないし、算定率もかなり低いものとなるだろう。






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